日常的には一言で「戸籍」としか口にすることのない書類ですが、実はいくつかの種類があります。
また、初めて戸籍に登録された時期に応じて、必要となる枚数もどんどん増えていくというのが実情です。
特に戸籍謄本は現時点で使用されているものです。
そのため、結婚や離婚、出生や死亡、または法律の改正による形式の変更などにより、次から次へと新しくなるものだからです。
そのため、場合によっては取得しなければならない戸籍謄本が膨大になることがあります。
また、きちんと理解していなければ取得漏れが生じる可能性があります。
万一取得漏れがあれば、二度手間三度手間になってしまうことも考えられます。
それを避ける意味でも、戸籍謄本の種類や役割について知っておく必要があるでしょう。
では、まずはその戸籍謄本の種類についてご説明しましょう。
戸籍は、大きく分類すると4種類に分けることが出来ます。
その名の通り、現在使っている戸籍のこと。
いわゆる「戸籍謄本」と言うと現在戸籍のことを指すことがほとんどです。
1人でも使用していれば作成されるもの。
戸籍法が改正されればそれに基づいた戸籍謄本が作成され、全ての国民が一斉に新しい戸籍を使用するようになります。
戸籍法が改正され、様式の変更等の理由により新規に戸籍が作成された際、過去に使用していた戸籍は閉鎖されることになります。
この閉鎖された戸籍は今後変更されることはありませんので、廃棄されるまで役所内で保管されることになります。
全ての戸籍が必要になる場合は、こういった改正前の原戸籍も全て必要となってきます。
現在の戸籍は平成6年に戸籍法の改正により書式が従来の縦書きのものから、コンピューター化されて横書きへと大きく変更されました。
そのため、現在戸籍は全て横書きのものになっています。
なお、「改製原戸籍」は「かいせいはらこせき」と読みます。
「げんこせき」と読んでも間違いではありませんが、言葉のみでやり取りをしていると「現戸籍」と勘違いする可能性があるため、間違いを避けるために「はらこせき」と読む場合が多いのです。
このように、誤解を招く響きになってしまう場合にはあえて別の読みにするケースがあります。
戸籍に記載されていた人が婚姻、転籍、死亡などの理由により1人もいなくなってしまった場合、戸籍謄本は「除籍謄本」と呼ばれるようになります。
改正原戸籍同様、除籍謄本も戸籍としては閉鎖されるため、今後変更が加わることは原則としてありません。
一般的には上記の3種類が「戸籍」と呼ばれるものですが、それ以外にも戸籍に関係する特別な事情で発行される証書があります。
「戸籍の廃棄証明書」は、保存期間が終了したために廃棄され戸籍がなくなってしまった場合に発行されます。
平静22年の6月1日までは、戸籍の保存期間は80年でした。
しかし日本人の長寿化などにより、相続などの手続の場合には80年以上前の戸籍が必要となることも多くなりました。
そのため保存期間が変更され、現在では150年間保存されることになっています。
そのため、現在では戸籍の廃棄証明書が必要となるケースは徐々に減りつつあります。
「消失証明書、告知書」は、様々な事情で戸籍が物理的に消失してしまった場合に発行される証明書や告知書です。
例えば震災や水害などで役所が物理的な被害に遭った場合には、紙で保管されている戸籍にも被害が及んでいることもあります。
出生から死亡までの長期間にわたる戸籍の収集が必要な相続の場合には、こういった書類が必要になるということもあるかもしれません。
相続登記の場合に必要となる戸籍は、原則として「被相続人(死亡した方)の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本等全て」のほか、相続人となる方々の「現在の戸籍謄本」と言われています。
しかし、死亡した方と相続人との関係性によって、集める書類は異なります。
大きく分けて4種類のパターンがありますので、それぞれについて確認していきましょう。
配偶者が死亡した場合には、その配偶者の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍等、全ての戸籍を取得する必要があります。
ただ、直近のものはわかっても、過去のものを漏れなく取得することが出来るのかという心配があるかもしれません。
その場合は、最新のものを取得し、そこから過去へと遡っていく方法を取ることになります。
例えば、死亡したため最新になった戸籍を取得し、内容を確認すると例えば「平成6年の法務省令○○号により改製」など、何が理由で作成されたものなのかということが読み取れます。
他にも戸籍が作成される理由としては、婚姻や転籍、分家等、様々な事情があります。
いずれにしても、戸籍の変更に関わる届け出を役所に行った時点で新しい戸籍が作成されているはずですので、その全てを遡り取得する必要があります。
子が未婚で両親が存命の場合には、子の遺産を両親が受け取ることになります。
その際、必要となってくる戸籍は「子の出生から死亡まで」の全てで、配偶者と変わりはありません。
ただ、子と親はほとんどの場合ずっと同じ戸籍で過ごすため、相続人と被相続人の戸籍が同一であるということも多く、過去の戸籍を追うこともさほど難しいことではないかもしれません。
直系尊属とは、父母、祖父母、曾祖父母、高祖父母等、自分より上の世代で、家系図を描いた場合に世代の上方向に真っ直ぐに繋がっている親族のことを指します。
今回は父母ではなく、更に上の祖父母が亡くなった場合として説明します。
既に父母も祖母も他界していた場合に祖父が死亡した、という場合で他に親族もいない場合、遺産の相続権は孫である自分が持つことになる、ということがあります。
その際、被相続人(祖父)の戸籍だけでなく、祖父の直系の長男であり、相続人である自分から見て父にあたる人物の戸籍も必要となります。
もちろん、いずれも出生から死亡までの全ての戸籍が必要となりますが、祖父と父とで重複している部分があればその部分に関しては省略することが可能です。
兄弟姉妹が死亡し、更に父母もともに死亡しているために相続人が自分となった場合には、更に多くの戸籍が必要となります。
まずは被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍。
それに加えて、父母それぞれの出生から死亡までの全ての戸籍が必要となり、出生から死亡まで全てを集めなければならない人物が3人になるのです。
これに限った話ではありませんが、なぜ出生から死亡までの全ての戸籍が必要になるのかと言うと、他に遺産相続の資格を持つ家族がいないかどうかを確かめるためです。
特に兄弟姉妹の場合には、両親が離婚・再婚といった形で戸籍が入れ替わっている可能性もあり、相続人の目に見える範囲だけでは把握しきれないケースも多々あります。
こういった場合にもトラブルなく相続を完了するためには、面倒ではありますが多くの戸籍を取得する必要が出てくるのです。
戸籍謄本を取得するためには、基本的には本籍地にある役所に申請する必要があります。
しかし、その申請をするのに役所に直接行く必要があるのでは? と思っている方もいるかもしれません。
受け取りに関しても、役所の窓口しか方法がないのでは……と考えている場合もあるのではないでしょうか?
戸籍の取得は、現在ではかなり手間がかからなくなっています。
電子データとして管理されるようになり、今後徐々に変更されていく可能性もありますが、2019年時点での取得方法は下記の通りとなります。
申請人の本籍地の役所に申請を行います。
この際、特に引っ越しを繰り返している人に関しては注意が必要ですが、『現住所のある役所』ではありません。
戸籍は本籍地に保管されることになるため、まずは本籍を調べた上で、該当の役所に申請を行うことになります。
取得方法は下記の3種類があります。
・本籍地の窓口
・郵送
・コンビニ
このうち、コンビニについては注意が必要です。
まず、戸籍を含む様々な書類の受け取りをコンビニで行えるサービスが展開されていますが、これは一部の市区町村のみが行っているサービスで、全国どこでも可能というわけではありません。
また、コンビニで受け取れるのは「現在戸籍」のみとなるため、それ以外の改正原戸籍や除籍謄本は本籍地の窓口か郵送を利用する必要があります。
自分のほしい書類がコンビニで受け取れるのかどうかは、事前に確認するようにしましょう。
それぞれの書類を取得する際には、種類ごとに必要となる費用が発生します。
・現在戸籍:450円
・除籍謄本、改正原戸籍:750円
・戸籍の附票:300円
これらを、直接窓口で申請する場合には現金で支払います。
郵送の場合には定額小為替を添付して申請することになりますが、その際金額は多めに入れておく必要があります。
というのも、自分が把握していない除籍謄本や改製原戸籍が存在している場合があり、それらもまとめて取得する必要が出てくるかもしれないためです。
もちろん、改めて申請し直すということも出来ますが、二度手間になってしまい、送料もよけいに掛かってしまいます。
ですから、最初から多めの金額を入れておき、もしもの場合には一緒に取得出来るようにしておくのです。
このとき、おつりが出た場合には戸籍と共に返送されてくるため、心配はいりません。
相続登記の戸籍は、被相続人の出生から死亡に至るまですべてが必要となります。
しかし、様々な事情で登記簿と現住所が繋がっていないということも考えられます。
登記を行った後、登記名義人が別の場所に引っ越しをしてしまっているというケースは多々あります。
引っ越しをすれば、住民票等の直接的に必要となる申請はスムーズに行っている人がほとんどですが、登記簿の住所変更は怠ってしまうというケースも少なくありません。
そのため、登記簿上の住所と最後の居住地の住所が異なっているということも珍しくはありません。
こういう場合には、戸籍の附票等を提出して登記簿、戸籍、戸籍の附票等それぞれの情報を照らし合わせ、本人確認をすることになります。
しかしこの戸籍の附票の保存期間は5年と短く、申請のタイミングによっては廃棄されてしまっており、住所が繋がらない可能性もあります。
そのため、既に廃棄されているということを証明する書類を添付し、同一人物であるということを示します。
大きくわけると3種類の書類があります。
申請書に記載された内容(氏名・住所・本籍)と一致する該当者が存在しないことを証明します。
登記済証はいわゆる「権利書」と呼ばれるもの、登記識別情報はその後の法改正によって新しくなったもので登記済証と役割は同じです。
このいずれか又は両方を添付します。
これは、法務局に指示された場合に提出すればよいものです。
戸籍の附票がなぜ繋がらなかったのかという理由を記載し、実印を押印して作成します。
これにより、本人証明を行います。
最近生まれた法定相続情報証明制度によるものです。
この「法定相続情報一覧図」とは、これまで申請の際に出生から死亡までの戸籍の束が必要であった状況を改善するために考案されたものです。
大量に存在する戸籍の束を全て提出するということを繰り返していたのでは、申請人も受付窓口も非常に手間がかかります。
戸籍を参照することで確認したいのは、被相続人の家族関係です。
相続人が把握出来ていない家族が存在しないかどうか、それを確認することが目的であったため、それを一覧図の形にすることでより把握しやすく、提出する書類の枚数も減らせるという画期的な方法です。
「法定相続情報一覧図」は、管轄の法務局で作成します。
作成の際には一度全ての戸籍を取得する必要がありますが、その後は作成した「法定相続情報一覧図」の写しを提出さえすれば、相続登記の申請時に戸籍の提出が必要なくなります。
また「法定相続証明一覧図」は法務局で無料で作成することが可能です。
また、何枚でも取得可能で、5年間の保存期間があるため、その間であれば何度でも取得することが出来ます。
普段はひとくちに「戸籍」と言っていますが、実は細々とした違いが存在しています。
それは家族関係を証明する大切な書類でもあるため、保存期間も長く、結果的に膨大な情報を集めなければならないということにも繋がります。
相続登記に限らず、様々な場面で目にするものでもありますので、何をどこで取得出来るかは一度確認しておくとよいでしょう。