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債務整理(任意整理・個人再生・自己破産)完了シミュレーション

債務整理とは、負ってしまった借金を減額あるいは全免したり、支払期間に猶予を持たせたりすることで、借金のある生活から逃れることです。
ではいったい、債務整理にはどのくらいの時間がかかるのでしょう?任意整理、個人再生、自己破産のそれぞれの債務整理手続ごとに、どんな手続が必要で、どれくらいの期間を要するのかを解説します。


任意整理・個人再生・自己破産の手続完了までの期間

●任意整理の手続期間・・・3~6カ月
●個人再生の手続期間・・・15カ月
●自己破産の手続期間(同時廃止の場合)・・・8~9カ月
●    〃     (管財事件の場合)・・・11~12カ月

比較すると、「任意整理」が圧倒的に短期間で手続が済み、「個人再生」がもっとも長く時間がかかるといえます。
なぜ「任意整理」はこんなに短くて済むなのでしょう?「個人再生」の手続の方が「自己破産」よりも長期間にわたってしまう理由はなぜでしょう?

任意整理の手続期間が短い理由

任意整理とは、裁判所を介さずに依頼者と貸金業者が直接交渉して、借金の減額を申し入れることです。
もちろん依頼者自らが交渉するわけではなく、弁護士や司法書士にあいだに入ってもらって交渉を進めます。
準備する書類等も少なくて済み、個人再生や自己破産と比べると圧倒的に手続が簡便です。

自己破産よりも、個人再生の手続の方が長くかかる理由

個人再生と自己破産はいずれも裁判所を介して行われる債務整理方法ですが、大きな違いは、個人再生は“借金の減額”であるのに対し、自己破産は“借金の全額免除”になるということ。
要するに、個人再生は「返済計画の立案」と「返済の実行性をテストする期間」が必要となるため、時間がかかるのです。
自己破産ではその期間が要らない分、トータルで短くなります。
個人再生と自己破産は提出書類や審査などの要件はほとんど変わらず、自己破産の方が短期間で済むため、住宅ローンさえなければ自己破産をすすめられるケースも多くあります。

任意整理の手続の流れ

①取引履歴取り寄せ・・・1~3カ月

任意整理手続は、まず債務者が司法書士に依頼することから始まります。
依頼を受けた司法書士は債務者と面談を行い(最低1回は面談する義務あり)、貸金業者に「受任通知」を送付。
通知により「任意整理手続に入ります」と宣言したことになり、この時点で貸金業者から債務者への接触は法によって禁じられ、借金の督促は止まります。

債務者は司法書士の指示に従い、取引履歴の取り寄せを開始。
これは、どの貸金業者からいつ、いくら貸りたのかが記載された履歴書類を取り寄せる手続です。
この取引履歴の取り寄せによって、過払い金が見つかるケースも多くあります。
借金の履歴書類は、すべての貸金業者が完済から一定期間保管する義務があるもので、すぐに発行してくれる業者もあれば著しく遅い場合もあり、各社の対応によって1~3カ月という幅が生じます。
とはいえ交渉を長引かせれば、債務者が任意整理をあきらめて自己破産手続を始めるかもしれません。
そうなると貸金業者は1円も回収できなくなり、いわゆる「貸し倒れ」になってしまうため、むやみに遅延させることはないでしょう。

②積立金・・・2~6カ月

①の取引履歴取り寄せと同時に開始されるのが、積立金の手続。
任意整理後に貸金業者に返済するお金や、司法書士に支払う報酬金を積み立てるため、事務所の銀行口座宛に何回かに分けて振り込みます。
これは返済および報酬金の確保と同時に、任意整理後にきちんと支払える意思や能力があるかを見る大切なもの。
複数の業者から借金があって総額が大きい場合や、1回当たりの返済額が少ない場合は、当然積立期間が長くなります。
ある程度まとまった額が振り込める場合は、3回程度で終わる場合も。

③貸金業者との交渉・・・数日~1週間

積立期間が終了したのち、金利の引き直しをして借金全体の額を減らします。
任意整理では多くの場合、金利は全額免除され、元金だけを返済する旨を貸金業者と交渉します。
返済額がまとまったら、1回当たりいくらの金額を何分割で返済するか、返済をいつ開始するかなどを記載した文書を貸金業者に提出。
返済案をファックスや郵送で送付して、その後に電話で交渉。
積立終了から文書の送付までは早く、即日で行われることもあります。
貸金業者ごとに求める返済回数や開始時期などはだいたい決まっており、交渉がこじれることはほぼ無いといっていいでしょう。

④交渉内容決定

貸金業者との交渉が成立すれば、交渉時に取り決められた時期から返済金の振り込みが開始されます。
任意整理の手続自体は最短で3カ月、長くても半年ほどで済みますが、支払い自体は36~60回ほどの分割になることが多く、全額返済までは3年〜5年ほどかかります。
その間は当然“ブラックリスト”に載ることになりますので、新たにローンを組んだりクレジットカードを作ったりすることはできません。

個人再生の手続の流れ

①取引履歴取り寄せ・・・1~3カ月

個人再生も任意整理の時と同様に、債務者から依頼を受けた司法書士の指示で、まずは取引履歴の取り寄せから手続を開始します。

②積立をしながら書類集め、資産調査等・・・6カ月

取引履歴を集めながら、積み立てをするのも任意整理と同様の流れです。
しかしこの時期に、個人再生ではさらに同時並行で資産調査書類も集めなければなりません。
この書類とは、現時点での債務者の収入と資産に関するものすべてであり、具体的には給与明細、2年分の通帳記帳、源泉徴収票、課税証明書、保険解約の返戻金証明書などなど、多岐にわたります。
すべてを集めるのには、最低でも半年近くかかってしまうでしょう。

個人再生手続でも、司法書士が「受任通知」を送付した時点で貸金業者からの督促は止まります。
それで安心してしまうのか、書類集めがはかどらない依頼者も多く、長いと2~3年かかってしまうケースもあり、司法書士としては悩みの種。
手続自体に期限はありませんが、あまりに停滞する場合はやむなく契約解除する場合もあります。
そうなると再び貸金業者からの督促が始まるばかりか、督促を停止していた期間分の損害賠償を求められる恐れもありますので、やはり書類集めは迅速に行う方が得策です。

③申立~個人再生委員打ち合わせ、履行テスト・・・6カ月

裁判所へ提出する書類等がすべてそろったら、いよいよ申立です。
申立が受理されると同時に、通常、弁護士会を通じて裁判所により個人再生委員が選任されます。
東京地裁と東京地裁立川支部の案件は100%選任されますが、地方によっては選任されないケースもあり、再生手続自体が簡略化します。

個人再生委員とは、裁判所と債務者の間に入って調査する役目で、申立から2週間~1カ月ほどのちに最初の打ち合わせが行われます。
具体的な調査内容は、認可決定後にきちんと分割返済を続けられるかを審査するもので、委員の口座への振り込みを一定回数繰り返します。
認可決定後の返済期間は3年以上と決まっており、最低でも3年間は分割払いを続けなくてはならないため、それだけの力があるか、書類や口頭では分からない「真面目さ」や「堅実さ」を注意深くチェック。
テストを経て問題が無いと認められれば、個人再生委員が意見書を裁判所に提出し、個人再生開始の判断を求めます。

④個人再生開始決定後、再生計画案の提出・・・数日~1週間

裁判所が個人再生手続開始を決定したら、すぐに再生計画案を作成・提出します。
再生計画案は、一月当たりの返済金額や分割回数等を計算して作成しますが、専用のPCソフトもあるので手間はそれほどかかりません。
履行テスト中に、司法書士の方で大まかな概要を作っておくのが望ましいでしょう。
再生計画案の作成に当たっては、個人再生委員からの助言もあります。

⑤再生計画の認可等決定・・・3カ月

再生計画案を裁判所に提出してから、認可決定までは3カ月ほどかかります。
小規模個人再生の場合に再生計画案が認可されるには、債権者の半数以上から消極的同意を得るか(=不同意回答をもらわないか)、不同意回答しなかった(=消極的同意をした)債権者から借入した金額が、再生債権額の過半数に達しなければなりません。
(住宅資金貸付債権を有する債権者等は、議決権がないためです。)
もし認可が得られ場合は一から手続をやり直さなければなりませんので、提出書類や再生計画案に抜け漏れがないよう注意しましょう。

自己破産手続の流れ

①取引履歴取り寄せ・・・1~3カ月

自己破産手続も、任意整理や個人再生と同様に、債務者から依頼を受けた司法書士の指示で取引履歴の取り寄せから始めます。

②積立をしながら書類集め、資産調査等・・・6カ月

取引履歴を集めながら、積み立て、さらに資産調査をする流れも個人再生と同様です。
自己破産の場合は、「仮に一定の収入があっても、収入や資産を借入金額が大きく上回るため、未来の継続的な返済が不可能である」という状態を認められなければなりません。
そのため、給与明細や通帳記帳2年分など個人再生の際に求められる書類の他にも、隠れた資産がないか徹底的に調べられます。
具体的には、株券、投資信託、有価証券、ゴルフ会員権、不動産、宝石、ブランド品、貴金属等が対象に。
また、過去に第三者にお金を貸している形跡がないかなども調査されます。

③申立

資産調査の結果、自己破産案件に該当するとなれば、裁判所に申立を行います。

④債務者審尋~破産手続開始決定・・・1週間~1カ月

申立後1週間~1カ月くらいで債務者審尋が行われ、破産手続開始が決定。
債務者審尋とは、債務者本人と裁判官による面談のことで、裁判所内で行われます。
この審尋を経て、本件が「同時廃止」or「管財事件」のどちらに該当するのかを判断します。
もし申立書を一見しただけで管財事件であると分かる場合は、債務者審尋の場に「破産管財人」を同席させる場合もあります。

~同時廃止の場合~

⑤免責審尋・・・1~2カ月

債務者に収入が無く、預貯金等の財産もまったく無いと判断されると、「同時廃止」が適用され、破産手続き開始からおよそ1~2カ月後に免責審尋が行われます。

破産手続開始決定に異議がある貸金業者等は、2週間以内に裁判所に即時抗告することができます。
債務者が情報を偽って借り入れた場合など、“詐欺的な借り入れ”の場合を除き、貸金業者からの不服申立てはほとんどないでしょう。
しかし個人的に借金をした友人・知人から、苦情が出るケースは珍しくありません。

免責審尋では、裁判所に債務者本人が出頭して、免責不許可事由(浪費やギャンブルによる借金、財産隠し等)の有無について問われます。
免責不許可事由が無い場合は、住所氏名本籍に変更がないか、申立書類の内容に間違いがないか等を聞かれます。

⑥免責許可決定・・・1カ月

免責許可決定から2週間ほどすると、官報に免責許可決定の公告が掲載されます。
公告掲載からさらに2週間が経過すると、免責許可決定が確定。
破産手続開始決定後に得た財産は「新得財産」とされ、貯金や生命保険への加入も可能。
ローンやクレジットの利用制限は、その後約5年~10年ほど続きます。

~管財事件の場合~

⑤破産管財人の選任~面談・・・2週間~1カ月

審尋後2週間~1カ月ほどで破産管財人(実務上弁護士が選任されております。)との面談日が設定され、弁護士事務所を訪問します。

面談は基本的には1回ですが、免責不許可事由に該当している場合は、数回にわたる場合も。
また、破産手続開始決定から債権者集会までの間、債務者の自宅に届く日本郵政株式会社の郵便物がすべて管財人の事務所に転送されます。
別の借入、財産隠しや資産の申告漏れを防ぐための措置で、約3カ月転送措置が取られます。
なお、予納金は、本人申立の場合、基本的には一括払いしか認められていないので、申立までに準備しておく必要があります。
免責不許可事由に該当していた場合においても、債務者が破産管財人の調査に協力的で、また書類、面談の結果を踏まえ、問題がなければ、破産管財人が免責相当の意見書を裁判所に提出する流れとなることが多いでしょう。
予納金は、基本的には一括払いしか認められておらず、申立までに準備しておくのが望ましいでしょう。

予納金も支払われ、面接や郵便物転送などの結果が問題なければ、破産管財人は意見書を裁判所に提出します。

⑥債権者集会~免責審尋・・・3カ月

破産管財人によって管財業務の報告が行われます。そして、破産財団を構成するような財産が無い場合は、破産手続は、異時廃止により終わります。
債権者集会が1回で終了した場合は、その日のうちに免責審尋が行われます。
この際,破産管財人から免責を与えてよいかどうかについての意見が述べられます。

⑦免責許可決定・・・1カ月

免責許可の決定に対しての不服申立ては、官報抗告掲載の日の翌日から2週間であり、免責許可決定発令から官報に登載されるまでが10日前後かかりますので、免責許可決定から約1か月みておけば
免責許可決定は確定となることが多いでしょう。

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