
ローンを組んでやっと購入した大切なマイカー。
ローン返済の途中で債務整理をすると、車は絶対に手放さないといけないのでしょうか?愛車に乗り続けながら、債務整理する方法はないのでしょうか。
また債務整理を一度でもしてしまうと、その後は二度と新しい車を持つことはできないのでしょうか。
債務整理と車のローンについて、解説します。
目次
【ケース1:車のローンを組んだ後に、任意整理をする場合】
車のローンを任意整理から外す
地方では車がないと生活できない!ということが当たり前かもしれませんが、東京や大阪などの大都市圏では、まだまだ「車はぜいたく品」という考え方が一般的ですよね。
公共交通機関も発達しているし、マイカーに乗り続けながら債務整理をするのって、なんとなく“ナシ”な気がしてしまいます。
しかもとくに男性の場合、車という存在は単なる移動手段を超えて、なみなみならぬ愛着を持った“相棒”のような存在であるという人も多いしね。
愛車を手放すことなく借金を減らしたい場合は、任意整理という手続がおすすめなんだ。
任意整理は借金そのものを減らすことではなく、金利の見直しをして返済総額を圧縮したり、返済期間を引き延ばしたりする債務整理方法ですね。
たしか住宅ローンの場合も、任意整理の対象から外すことで、マイホームに暮らしながら借金返済することができるんでした。
まさに車のローンも同じ扱いで、住宅ローンと同様に任意整理の対象から外し、その他の借金だけを整理することができるんだ。
住宅ローンと一緒の扱いなんですか!人生の大きな買い物はだいたい二つ、「家と車」といいますもんね。
それにしてもマイカーに乗り続けながら他の借金を返せるのは、うれしいですよね。
(まとめ)
◆車のローンを組んだ後でも、任意整理ならマイカーを手放さなくて済む
◆任意整理を行うと、車に乗り続けながらその他の借金を減額できる
車のローンを任意整理から外すには、厳しい審査がある
しかし、元の家に住み続けてマイカーも乗れるとなると、債務整理前の生活とほとんど変わりないわけですよね。
お金を貸している債権者の立場からすると、ちょっと甘いというか、やっぱり「家はともかく車なんて売って、はやく借金を返してくれ」という気持ちになりませんか?
任意整理をする人が負っている借金というのは、そもそも「住宅ローン」と「車のローン」が大半を占めている場合が多いんだ。
まずこの二つをきちんと返しながら、その他の借金も支払っていける能力があるかどうか。
そこは厳しく審査され、少しでも計画に不安がある場合は任意整理をあきらめて、個人再生か自己破産手続に進むしかない。
やはりそこは厳しいのですね。
となると、実際に家も車も両方守りながら任意整理を行うケースって、そんなに多くはないってことですか?
いずれにせよ任意整理で済むということは、債務者としては余裕がある場合がほとんど。
「住宅ローン」の項でも説明したとおり、任意整理が認められるまでには、事前に所得と支出のバランスを厳しくチェックされたり、積立金をしたり、いくつものステップがある。
これをクリアできるということは、そもそも性格もまじめで返済の意思があり、かつ十分な支払い能力があると認められたという意味なんだ。
ふむふむ。
任意整理ができるということ自体がまず難しく、逆にいうとそもそも任意整理できるなら、家も車も残せる場合が多いということですね。
たとえば育ち盛りの子供が複数いるとか、高齢で病気がちの両親を介護中とか…。
今は順調に借金を返せていても、子供の教育費や親の介護で急な出費が想定される場合に、将来どうするかを考えないとね。
そこまできちんと見られるんですね!それなら債権者側も納得というか、安心して返済を待てるんじゃないでしょうか。
(まとめ)
◆車のローンを組んだ後で任意整理する場合には、債務者の支払い能力が厳しく審査される
◆車のローンと借金返済同時に無理なく行えるよう、返済計画をしっかり立てることが大事
住宅ローンは返せるが、車までは難しい場合は?
ここまでは「どうしても車を手放したくない」という人の事例を見てきましたが、車にあまり執着がなく、「持ち家は失いたくないけど車は別にいい」という人も少なからずいますよね?
車を処分して現金化し、他の返済に当てられることを示せば、任意整理もしやすくなるし、確実にマイホームを守ることができるだろうね。
家も車もとなると任意整理自体が難しくなるけど、車さえ手放せば個人再生や自己破産までいかなくて済むのなら、そっちの方がよいのですか?
車を手放して任意整理で済むのなら、その方が断然おすすめだね。
どこまで車を守りたいのか、車がない生活と煩雑な裁判手続とを天秤にかけて、よく考える必要がありますね。
(まとめ)
◆車を手放せば任意整理が可能になる場合は、処分がおすすめ
◆個人再生や自己破産に比べ、任意整理は期間が短く手続も簡便になる
【ケース2:車のローンを組んだ後に、個人再生をする場合】
個人再生手続を行うと、ほぼ車を手放すことになる
続いては、任意整理が難しく「個人再生」で債務整理を行う場合です。
個人再生手続を行った場合でも、マイカーに乗り続けることはできるのですか?
後で述べるけど、仕事にどうしても車が必要な場合以外はほとんど車は処分の対象となり、現金化されて借金返済に当てられることになる。
「ほぼできない」ということは、ちょっとはできるということですか?その違いはいったいなんなんでしょう。
一般的に車を購入する際は、マイカーローンを組むよね。
ローン返済中はあくまでもその車の所有権はディーラーやクレジットカード会社のものであり、自分にはない。
これをいわゆる「所有権留保がある」状態と呼んでいるよ。
え!?自分の車なのに、所有権はないってことですか?ぜんぜん知りませんでした…。
所有権はないのに「所有権留保がある」っていい方、ややこしくないですか?そもそも所有権留保ってなんなんでしょう。
完済するまでは車の所有権はディーラー側に留まっている=留保している、という意味なんだよ。
そういうことなんですか…ローンを返し終わるまでは自分のものじゃないなんて、今初めて知りました。
きっと車を買う際に説明があったんですよね?
とにかくこの「所有権留保がある」状態だと、債務整理をする場合に真っ先に担保として処分の対象になってしまうんだ。
となると、「所有権留保がない」場合はつまり車の所有権は自分にあって、差し押さえられることもないということですか?
普通にマイカーローンを組んだ場合は、ほぼ100%所有権留保があると思っていいだろうね。
契約時に所有権について自分から交渉したり、銀行でローンを組んだりした場合に、まれに所有権留保がなくなるとされているけど、あまり見ないケースかな。
「所有権留保の有無」については、必ず車検証に記載があるからまずはチェックしてみよう。
私の名前は…「使用者」の欄に書いてあります。
あっ、たしかに「所有者」はディーラーになっていますね!これが「所有権留保がある」状態っていうことなんですね…。
(まとめ)
◆通常のマイカーローンを組むと「所有権留保」があるため、個人再生すると車は差し押さえられる
◆「所有権留保がない」状態でローンが組めることは、ほぼない
「所有権留保がない」場合に個人再生をすると、どうなる?
私の場合は所有権留保があるため、車が処分の対処になることはわかりましたが、もし「所有権留保がない」場合に個人再生をすると、どうなるんでしょう。
処分はされない代わりに、なにかデメリットはあるんですか?
でもその車は所有財産として見なされるため、「清算価値保障の原則」に従って弁済額が増える場合があるんだ。
「清算価値保障の原則」??また難しいワードが出てきましたね…
だって減らしてもらった借金よりも多い財産を持っているなら、そもそも減額する必要はないよね。
たしかに!債権者にとっては「お金持ってるなら満額支払ってよ」ってことですよね。
財産がありながら借金を減らしてもらえるなんて、それはおかしい。
なので、マイカーを持ち続けることで弁済額が増える場合、いったん車を手放した方が有利になることもある。
そこはよく司法書士と相談して、最良な方法を見つけることが大切だよ。
(まとめ)
◆マイカーを持ち続けることで「清算価値保障の原則」により、弁済額が増える場合がある
個人再生手続前にローンを完済すると、偏頗弁済とみなされる
どうしても車を手放したくない場合、個人再生手続をする前にローンを完済してしまえば、所有権は自分にありますよね。
さっき聞いた「清算価値保証の原則」に従っても車の価値の方が低いなら、弁済額が増えることもないし、一番いいような気がしますが。
借金を返す先を勝手に決めることは、債権者側からすると不公平で、とてもずるい行為と見なされるんだ。
ひぃぃ。
そんなにいけないことなんですね!「車が一番大事だから、これだけ返しちゃおう」なんて甘い考えでした…。
やはり債務整理は公明正大に、正々堂々と行うのが一番の近道なんですね。
そううまい話はないので、潔く車を手放すことを受け入れる方が早いかもしれないね。
(まとめ)
◆特定の借金だけを返済する「偏頗弁済」はいろいろと問題になる
◆第三者弁済は偏頗弁済には当たらないが、その後「清算価値保障の原則」で財産と見なされる可能性はある
仕事に必要な車は所有が許される?
さっきおっしゃっていた「車を仕事で使っている場合」は、特例に当たるんでしょうか。
車を手放さなくてもいいのですか?
例えば、車を使って仕事をしており、それがないと生活が成り立たないような場合に、裁判所の許可が下りる場合があるんだ。
へー!それはありがたいですね。
でも車がないと仕事ができない、イコール借金を返すためのお金を作れないということだから、結局いつまでも借金が返せない。
債権者にとっては早くお金を作って、少しでも返してほしいわけですから。
債務者にとっても債権者にとっても最良の道を探る、というのが債務整理の大原則なわけだから、車の所有についてはわりと寛容な判断がなされる場合も多いよ。
(まとめ)
◆仕事で車を使う際など、「別除権協定」によって所有が許される場合がある
【ケース3:住宅ローンを組んだ後に、自己破産をする場合】
自己破産の申立てをした時点で、車は100%処分される
もちろんマイカーも原則として処分の対象になるよ。
まあ、自己破産だとすべての借金が帳消しになるのだから、車はあきらめざるを得ませんよね。
。
実際にはどのように処分されるのですか?
耐用年数を超えていても、外国車などの人気車種は高く買ってもらえる場合があるので、まずは査定を受けるよう指示されることがあるよ。
ただし、以下の法定耐用年数を超えている場合は、処分の対象とならない場合があるよ。
【法定耐用年数一覧】
一般家庭用
軽自動車=4年
普通車=6年
バイク=3年
事業用
2000CC以下=3年
3000CC以上=5年
その他=4年
(まとめ)
◆自己破産すると、車は管財事件の手続を経て処分される
◆法定耐用年数以下の車は、査定によって売却価格が決められる
◆外国車などのに人気車種は、法定耐用年数を超えても査定される場合がある
【債務整理を行った後に、再び車を持つことはできる?】
ブラックリストの掲載期間が終われば、再び車のローンが組める
住宅ローンの場合は、ブラックリスト掲載期間中はほとんどローン審査に通ることはないとされていますね。
掲載期間は信用情報機関や債務整理方法によって異なりますが、だいたい5~10年くらい。
だけど、掲載期間が終了してからは影響が残らないとされています。
車の場合も一緒ですか?
理後わりとすぐに車を持てるチャンスもある。
債務整理をしたからといって、二度と車を持てないとは限らないから安心してほしいな。
(まとめ)
◆債務整理を行った後のブラックリスト掲載期間中は、車のローンを組むことができない
◆5~10年のブラックリスト掲載期間が終われば、再びローンが組める可能性あり。
◆債務整理手続後、現金一括で購入すれば、ブラックリスト掲載期間中でも車が持てる





