公開数
体験談サイト

相続登記における相続税の扱いとは?

相続が発生した際に課税されるのが相続税です。
これは、死亡した方から受け継いだものに対して納付することになります。


相続税納付の期限や方法は?

相続税を納付するのはいつまでなのか、その期限をご存知でしょうか?
相続税の納付は、被相続人の死亡から10ヶ月以内と定められています。
これは、相続人全員の連名で納付することと定められています。
また、納付の細かい期日についても定めがあり、納付義務を負った日付の前日に満了するということになっています。
例えば、平成30年1月5日に被相続人が死亡した場合は、納付義務が発生するのは平成30年1月6日となり、納付の期限は10ヶ月後の平成30年11月5日までということになるのです。

また、納付の方法は原則として「現金一括」と定められています。
ただしこれは特別な事情がある場合に限り、例外として「延納」という手続を取ることも出来ます。
もっとも、あくまでも特別な事情がある場合のことなので、基本的には「現金一括」という形で覚えておきましょう。

相続税の計算方法は?

相続税はどんな遺産にも必ずかかることにはなっていますが、同時に控除なども定められています。
遺産に係る基礎控除額(課税最低限)を上回る財産(正味遺産額)を相続した場合には支払う義務が発生しますが、この控除額を差し引いた額がマイナスになった場合には納付する必要がありません。

ですので、まずは正味遺産額を求める必要が生じます。

正味遺産額の算出の仕方

【遺産総額(注1)-借入金などの債務・葬式費用(注2)=正味遺産額】
基本的な算出の計算式は上記の通りとなります。
この際の注意点について、細かく見ていきます。

注1:遺産総額とは?

遺産総額を計算する際には下記の通りに考えます。

・受取人が被相続人本人になっている生命保険金や退職金などのみなし相続財産を含みます(生命保険金に関しては、受取人が被相続人以外になっている場合には『贈与』ないし『所得』とみなされます)
・相続開始前3年以内の贈与財産があれば加算します。

・相続時精算課税制度を適用した場合は、適用後の全ての贈与財産が加算されます。
ただし、住宅取得資金贈与や例えば、婚姻期間20年以上の夫(配偶者)から妻(配偶者)への居住用不動産の贈与についてはこれに含みません。

注2:借入金などの債務・葬式費用の内訳は?

葬式費用については読んで字の如くですが、「債務」に関しては下記のようなものも含まれますので、単純な借金のことを指すわけではありません。

・病院へ支払うべき入院費・治療費は債務とみなされます。

・その年の固定資産税・住民税は債務となります。

・亡くなった年の亡くなる日までに所得について、準確定申告をしたことにより支払うべき所得税及び復興特別所得税は債務となります。

正味遺産額と遺産に係る基礎控除額の大小の比較

それぞれを比較した際に相続税がかかるかどうかは、下記の通りとなります。

【正味遺産額>遺産に係る基礎控除額(注1)】……相続税がかかる
【遺産に係る基礎控除額(注1)≧正味遺産額】……相続税がかからない
ただし、下記の点に注意する必要があります。

注1:遺産に係る基礎控除額の計算方法

【定額控除額3,000万円+比例控除額600万円×法定相続人の数(注2)】
上記の計算式で算出した金額と正味遺産額を比較することになります。

なお、法定相続人の数には税法上の制限があります。

注2:法定相続人の数の考え方

法定相続人は、原則として妻や子どもの人数を加算していくことになります。

ただし、養子がいる場合には加算できる人数に制限があります。

1)実子がいる場合→養子は1人だけ加算出来る ※ただし特別養子縁組は実子とみなす
2)実子がいない場合→養子は2人まで加算出来る

▼周辺知識

一代飛ばして孫に遺贈すると相続税は何パーセント余分にかかる?

子どもがいるにも関わらず、子どもには遺産を相続させずに孫に遺贈という形で相続させる場合には、相続税は【20%】余分にかかることになります(本来2回に分けて相続を行う=相続税を2回支払うことになるところを1回で済ませることが出来るため)
また、これは養子として孫をとった場合に、子どもを飛ばして養子の孫に相続させるというケースでも考え方は同じです。

ただし、子どもが既に死亡していて、代襲相続する孫に相続させる場合の相続税は通常通りとなります。
余分な相続税がかかるのは、あくまでも本来相続させるべき子を飛ばして節税を企てるという場合に限られます。

相続税の総額と納付税額はどのように求めればいい?

正味遺産額と基礎控除額を比較し、相続税がかかると確定すると、次は納付税額を求める必要があります。

納付の際には、相続税の総額から控除が発生するため納付税額は異なるのです。

算出には、下記の順序で計算していきます。
その際、例として「正味遺産額が5億円で法定相続人が妻と子2人」という家庭を取り上げます。

1)課税遺産総額(正味遺産額-基礎控除)

前述の「正味遺産額」と「基礎控除額」を代入して算出します。

例)正味遺産額6億円、基礎控除額(定額控除額3,000万+比例控除額600万×3人)
6億円-(3,000万円+600万円×3)=5億5,200万円
よって、課税遺産総額は5億5,200万円

2)法定相続分に応じた取得金額

例)法定相続人は、妻と息子、娘の子2名。
よって、法定相続分は妻1/2、息子1/4、娘1/4となります。

よって、法定相続分に応じた取得金額は、
妻  5億5,200万円×1/2=2億7,600万円
息子 5億5,200万円×1/2×1/2=1億3,800万円
娘  5億5,200万円×1/2×1/2=1億3,800万円

3)相続税の速算表を用いて相続税の総額を求める

相続税の税率は、10%から55%の累進課税となっています。

各人の取得金額に応じて課税率が異なるため、各相続人の法定相続分に応ずる取得金額と税率を一覧表とした「相続税の速算表」を用いて税率を求め、控除額を引き算して算出した相続税の総額を算出します。

相続税の速算表
法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% -
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円
※国税庁「相続税の税率」より引用
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm)
例)上記の速算表から導き出した税率と控除額を用いて相続税額を算出します。

妻  2億7,600万円×45%-2700万円=9,720万円
息子 1億3,800万円×40%-1700万円=3,820万円
娘  1億3,800万円×40%-1700万円=3,820万円
それぞれの相続税額を足して、相続税の総額は1億7,360万円

4)各人の納付金額を算出する

相続税の総額を求めた後、各人の相続割合に応じて実際の相続税を求めます。

この際、妻には「配偶者税額の軽減」という別の控除が発生するため多くの場合は相続税が0円になります。
これについては後ほど説明します。

例)妻、息子、娘がそれぞれ法定相続割合と同じで相続し、相続税の総額は1億7,360万円である場合。

妻  1億7,360万円×1/2=8,680万円
※ただし配偶者税額の軽減により、納付税額は0円
息子 1億7,360万円×1/4=4,340万円
娘  1億7,360万円×1/4=4,340万円
★更に特別な控除がある場合も
未成年者控除や障碍者控除などの、税額から控除できるものがある場合にはこれらの控除額を引いた後の金額が納付税額になります。

・未成年者控除額……10万円×(20歳-相続開始時の年齢)
・障碍者控除額………10万円×(85歳-相続開始時の年齢)
※特別障碍者は20万円

各種控除について

相続税には各種控除も設定されています。
それぞれ、下記に記した控除額を引いた後の金額が納付税額となります。

配偶者税額の軽減

配偶者の相続分と1億6,000万円のうち、どちらか大きいほうの金額と比較した際、その金額を超えていなければ相続税がかからなくなります。

例)配偶者と子どもの2名が相続人となっている場合
遺産額1億6,000万円で、配偶者のみが全額相続した場合
→1億6,000万円に収まっているため配偶者の相続税はかからない
遺産額5億円で、法定相続分の割合と同率で相続した場合
→相続額は配偶者2億5,000万円、子ども2億5,000万円、
法定相続分以内に収まっているため相続税はかからない。

遺産額2億円で配偶者のみが全額相続した場合
→法定相続分以上の金額であり1億6,000万円も超えているため相続税がかかる

相次相続控除

1回目の相続があってから10年以内に2回目の相続があった場合、1回目の相続税の一部が2回目の相続税額から控除されます。
これを「相次相続控除」といいます。
これは短期間に複数回の相続があった場合に、税金の負担が重くなりすぎないようにと定められた制度です。

相続制の修正申告・延納・物納

相続制の修正申告をするのはどんな場合?

申告後に下記の事象が起きた場合には修正申告が必要となります。

1)遺産分割協議が成立した
2)遺留分侵害請求あった
3)遺言書が見つかった
4)遺贈を放棄した
5)配偶者が財産を取得した
6)訴訟で和解した
7)退職金の支給が確定した 等
この際、税額が増える場合には「修正申告」を行い、追加で支払うことになります。
逆に税額が減る場合には「更正の請求」を行うことで還付されます。

相続税が一度に納付出来ない場合はどうする?

相続税は原則として現金一括での納付と定められています。
しかし、場合によっては現金を一度に用意することが出来ないこともあります。

このように、金銭の一時納付が困難な場合には延納が認められています。
そのためには、下記の要件を満たす必要があります。

1)納付税額が10万円を超えること
2)一時に金銭納付が困難なこと
3)担保が必要(ただし、延納税額が100万円以下で延納期間が3年以下の場合は不要)
延納の担保に出来る財産の種類は次に掲げるものに限られます。

・国債及び地方債
・社債その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの
・土地
・建物、立木、登記される船舶などで、保険に附したもの
・鉄道財団、工場財団など
・税務署長が確実と認める保証人の保証
延納は最長で5~20年まで認められます。
その際、いつまでに納付するかということを決めておく必要があります。

相続税の物納

金銭納付が困難な場合で下記の重要な要件を満たす場合には物納が認められます。

1)物納は、延納によっても金銭で納付することが困難な場合しか認められない
2)物納申請書を相続税の申告期限まで(10ヶ月以内)に税務署に提出しなければならない
3)物納申請書には、登記事項証明書、地積測量図、境界確認書などの必要書類を添付する。
特に境界確認書などは所持していない場合もあるので、その際は作成する。

4)税務署長の許可が必要 ※必ず申請が通るとは限りません
5)物納財産は、相続によって取得した日本国内にある財産に限られる。
海外に所有している財産は認められない。

6)物納できる財産には順位があり、管理又は処分するのに不適当な財産は認められない。

物納に充てることの出来る財産と種類、順位は下記の通りです。

第一順位
1)不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等(※1)
※1)特別の法律により法人の発行する債券及び出資証券を含み、短期社債等を除く
2)不動産及び上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
第二順位
3)非上場株式等(※2)
※2)特別の法律により法人の発行する債券及び出資証券を含み、短期社債等を除く
4)非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
第三順位
5)動産
7)物納財産の収納額は、原則として、相続税の評価額
8)物納も譲渡の一種だが、譲渡所得税は課税されない

死亡で取得した財産を譲渡した場合の譲渡所得税の特例ってあるの?

相続で取得した財産をすぐに譲渡した場合、一定の要件を満たすことが出来れば特例があります。

それが、死亡の日から3年10ヶ月以内の譲渡であるという点です。

相続税の申告期限の翌日から3年以内(死亡の日から3年10ヶ月以内)に相続財産を売った場合には、一定の相続税相当額が、その財産の譲渡所得の金額の計算上、その売った財産の取得費(登記費用など)に加算されます。

譲渡所得金額は
【収入金額-(財産の取得費+一定の相続税額)-譲渡費用-特別控除額】
により求められます。
この「一定の相続税額」とは、「収入金額-(財産の取得費+譲渡費用)」の金額が限度とされています。
この金額がマイナスになる場合には加算される金額はありません。

また、取得費は譲渡収入金額の5%相当額の概算取得費とすることも出来ます。
領収書などがない場合にはこの計算方法で算出することになります。

相続で空き家となった土地建物を売却した場合の特例ってあるの?

一定の要件を満たす場合は、3,000万円の特別控除が可能です。

これは、空き家が放置されることにより周辺の生活環境に悪影響を及ぼしてしまうことから「空き家に係る譲渡所得の特別控除」の特例が設けられ、空き家を減らす取り組みがされています。

・相続開始直前において被相続人が居住していたものであること
・相続開始直前において被相続人以外は居住していなかったものであること
・昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家屋であること
・相続時から譲渡時まで、事業、貸し付け又は居住用に使っていないこと
・現行の耐震基準に適合する家屋であること(耐震リフォームをした上での譲渡も可)
こういった要件を満たす場合には、特別控除を受けることが可能です。

おわりに

相続税は納付しなければなりません。
しかし、条件によっては納付の必要がない場合も多くあるため、まずは相続財産がどれだけあり、誰がどのような割合で相続するのかということを丁寧に紐解く必要があります。
正確に財産を把握することによって、場合によっては納税額が減ることもあるため、わからない場合には躊躇わず専門家に相談しましょう。

おすすめ体験談