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任意整理の手続きは出来ない場合もあるの…?

2020年1月22日 公開 更新

任意整理とは,貸金業者と交渉し,債務金額を減らしたり月々の返済額を減らしたりすることによって現在の支払いよりも減らす手続のこと。
減額されるのは利息制限法によって定められた利率よりも高い利息の場合で,利息制限法よりも低い利率の場合には減額出来ません。

そもそも任意整理とは,法律で定められた債務整理の方法ではありません。
自己破産や個人再生には直接の根拠となる法律がありますが,任意整理は民法上の根拠はないことはないですが,弁護士や司法書士が様々な事例を積み上げることで今の形になったというものです。
そのため,貸金業者に交渉を行っても受け入れてもらえない場合もあるのです。

基本的には任意整理が成立すれば最低でも元金は戻ってくることになるため,他の債務整理よりも不利益が少なく,貸金業者も交渉に応じてくれる場合がほとんどです。

しかし,原則として「任意」の債務整理であるため,その交渉が上手くいかない場合も多くはありませんが存在しています。

では,どのような場合に任意整理が出来なくなってしまうのでしょうか?


司法書士法人相澤法務事務所は2009年東京都板橋区にて開業2019年で10周年を迎える。
開業当初から「依頼者ファースト」を軸に少数精鋭スタッフにより事務所を運営。
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司法書士法人相澤法務事務所

司法書士法人相澤法務事務所
代表司法書士 相澤 剛

借りてすぐに任意整理に入る場合は断られることもある

貸金業者に借入を行い,返済実績が少ないうちに任意整理を申し入れても交渉が成立しないことがあります。

というのも,貸金業者は主に利息によって利益を得ているからです。
返済実績が少ないということは,それだけ貸金業者側の利益が減るということに繋がります。
もちろん,元本だけでも戻ってくれば売上がマイナスになるということはありません。
しかし,利益があがらなければ事業を継続することが出来ません。
そのため,借りてすぐの任意整理というのは断られるか,交渉に応じてもらえても不利な条件になることがほとんどです。

不利な条件とはどんなもの?

任意整理を行った場合,基本的には利息をカットし,残りの返済金額を3~5年かけて返済することが基本になります(交渉の内容によるため,必ずしもこの限りではありません)
しかし,少数回しか返済を行っておらず,そもそも利息をほとんど支払っていないという場合には利息カットには応じてもらえないというケースがあります。

その方の状況や業者の対応によって異なるため,これに関しては絶対にこれだと言うことは出来ません。

任意整理における利息には,2つの種類があります。
「将来利息」と「経過利息」です。

経過利息:最終弁済日から和解成立の期間までの期間の分の利息
将来利息:和解成立の日から完済日までにかかるはずだった利息

任意整理を行った場合,滞りなく任意整理に応じてもらえたとしても,経過利息に関しては支払ってほしいと言われるケースはあります。
繰り返しますが,任意整理はあくまでも「任意」。
どこまで認められるかは,貸金業者や本人の状況に応じて変わってきますが,少なくとも将来利息に関してはカットしてもらえると考えていいでしょう。

ところが,少数回の返済の場合,経過利息はもちろん,将来利息に関しても完全にはカットしてもらえないというケースがあり得ます。
全額カットではなく数パーセントの利息はかかってしまうなど,生活の負担を完全に取り除くことは難しい状態になってしまいます。

詐欺的な借入と捉えられたりしないの?

借りて,数回の返済ですぐに任意整理をしようとするのは,資金を得て利息を払わないようにするための詐欺的な借入だ――と思われてしまうのではないか? そんな疑問もあるかもしれません。

結論から言えば,そう捉えられる可能性は低いでしょう。
自己破産と異なり元本は返済していくことになりますし,任意整理をすることで生じるマイナス面の方が大きいからです。

ですから,万一のことがあれば任意整理を考えても問題はありませんが,そのようなことが予想しうる場合にはそもそも借入を思いとどまることも必要かもしれません。

介入する会社の方針により,一括払いしか認めないことがある

ほとんどの貸金業者は任意整理の交渉に耳を傾けてくれます。
また,特別な事情がない限りは返済方法についても受け入れてくれるケースが多いです。

しかしながら,一部の会社は任意整理の交渉には応じてくれず,残りの返済額を一括で納めることを要求してくることもあります。

たとえば貸金業を廃業している会社や会社更生法等倒産法の適用を受けている会社がこういった対応を取る場合があります。
特にノンバンクの貸金業者に関しては財政基盤がないため,貸金の回収を厳格にしないと経営がまわらないという事情があります。

また,新規貸し付けを停止している会社の場合はどうでしょう?
場合によっては任意整理に応じてくれるケースもあります。
しかし,この交渉は非常に難しいものとなります。
基本的には任意整理の交渉に応じてくれないと考えた方が良いかもしれません。

任意整理をしても経済的メリットがない場合もある

これは「任意整理が出来ない」というよりも「任意整理をしない方がいい」というケースで,任意整理の専門家の側でストップをかけるパターンになります。

利率がもともと低い場合

任意整理は高金利の利息をカットすることに意味がある行為です。
現在の法定利息は18%。
これよりも高い場合に利息をカットし,過払い金の請求なども行った上で残った元金を3~5年で返済するという方法です。

そのため,利率が低い商品に関しては任意整理をするメリットがなく,逆にデメリットの方が大きくなってしまいます。

たとえば,利率が低い場合には,利息カットをして返済せずに済むことになる金額よりも,専門家に依頼するための報酬の方が多くなってしまうような場合は経済的に無意味です。
頑張って通常通りの返済をした方が無難でしょう。

また,信用情報に傷が付きますので,この点が大きなデメリットです。
信用情報に任意整理の事実が載っている間は借入が難しくなったり,クレジットカードを持つことが出来なくなったりするのは他の債務整理と同じですが,大して生活が楽になるわけでもないのに信用情報まで傷が付くというのでは踏んだり蹴ったりです。

およそ3~4%程度の教育ローン,1.5~4%程度の自動車ローン,奨学金などもこういった商品に含まれます。
いずれも法定利息の18%よりも圧倒的に低いため,任意整理のメリットを感じられるケースはほとんどありません。

利率が低い商品の場合は,余裕があるのであれば,なんとかして支払いを継続するか,高金利の債権のみを任意整理し,利率が低いものはそのままにしておくというやり方が無難です。

住宅ローンの場合

住宅ローンの場合は,自動的に不動産が担保に入っています。
そのため,任意整理をもちかけると支払いの継続が不可能と判断され,担保に入っている不動産を回収されてしまいます。
この場合は債務名義がなくても強制執行することが出来るため,非常に危険です。
任意整理の受任通知を送ると返済が止まります。
その間は保証会社が代理弁済を行うか,抵当権を執行して強制競売に掛けられ,その売上を返済に充てることになります。
当然そのとき暮らしている住居からは立ち退かなければならなくなりますし,競売での売上が返済金額に届かなければ残った分は引き続き支払わなければなりません。

不動産に限りませんが,現金化しやすいものを担保にとられている場合には任意整理は避けた方がいいでしょう。

3~5年の分割返済出来るだけの元金に留まっていない場合

任意整理は元金のみを3~5年で完済する,という前提で交渉を進めていきます。

そのため,そもそも元金が大きすぎる場合には,むしろ月々の返済額が大きくなってしまうということもあり得るのです。

例えば,元々10年間かけて返済する予定で,3年ほど過ぎた時点で任意整理を行おうとしたとします。
すると,本来の残りの返済期間は7年間。
しかし,任意整理はだいたいが3年程度で返済しきることをベースに考えますので,たとえ利息分をカット出来たとしても月々の返済金額は多くなると考えられます。

債務整理をしなければならないほど,月々の返済に困っているという前提があるならば,いくら合計の返済金額が少なくなると言っても,月々の返済金額が大きくなったのではあまり意味がありません。
それが出来るのであれば,繰り上げ返済を上手く活用して合計返済額を減らすようにすればいいのです。

こういった理由から,元金が大きい場合には任意整理は避けた方がいいでしょう。

過払い金を徹底回収しているような事務所に任意整理を依頼する場合

これは,貸金業者との交渉を依頼する事務所選びの問題です。

弁護士や司法書士の事務所の中には,過払い金が発生している場合に1円も譲らずに根こそぎ回収しようとする場所もあります。
もちろんこれは債務者にとってはありがたい話ではあります。
最初から過払い金の回収だけが目的なのであれば問題はないでしょう。

しかし,任意整理においては過払い金の回収まで徹底的に行おうとすると交渉が成立しないケースも多々あります。
それは一体どういうことなのでしょう?

任意整理は貸金業者に「協力」を求める行為

任意整理は最初にも述べたように,定められた法律はありません。
強いていえば民法の中の考え方をベースにしていて,当事者間での交渉によって行われるものです。
今いくら残っていて,これからどうやって返していくか。
それを先方に提示することによって,必ず元本だけは返せると約束出来れば交渉に応じてもらえると理解する方がいいでしょう。
あくまでも「任意」の債務整理のため,こちらからお願いをしたとしても,相手が受け入れてくれなければ成立しません。

それでも,自己破産や個人再生を行われるよりは元金の回収率は上がります。
ですから交渉に応じてくれるケースは多いものの,相手の態度を硬化させるような交渉の仕方をすれば当然成立しなくなってしまいます。

過払い金で一切妥協をしないと任意整理に協力してくれなくなるの?

協力してくれなくなることは十分にあり得ます。
そもそも任意整理の場合,利息をカットすることで返済しなければならない金額を減らし,残りの元本を確実に返済するという形式です。
利息をカットするということは,貸金業者の利益がなくなるということ。
相手も商売として行っているため,利益が上がらなくなってしまえば会社も立ちゆかなくなります。
ですから利益を削るようなやり方は出来れば避けたいというのが本音のはずです。

そんな中で,過払い金も全部返還しろ,利息分に関してもきっちり回収させてもらう,という形で1円も妥協せずに返還してもらった上で任意整理もさせてくれと言ったのでは,相手が交渉に応じてくれなくなってしまうのは当然です。

出来る場合でも極めてリスクの高い契約になってしまうの?

過払い金をびた一文譲らずに回収するという場合でも,任意整理を受け入れてくれるケースもあります。

しかしその場合,公正証書等の契約を要求されるなど,極めてリスクの高い契約形態になることが考えられます。

公正証書とは,公証役場で作成する文書です。
ここで和解書を作成した場合,例えば返済が滞ったら即座に給与等の差し押さえが可能になるような執行文言を記載することが出来ます。
これは,本来は裁判を行ってからでなければ出来ない給与等の差し押さえを,裁判なしで行えるようになるもので,今後返済を滞らせた場合のリスクが極めて高くります。

こういった契約形態になるということは,心理的な負荷がかかりますので,精神衛生上はあまりよいとは言えないかもしれません。

任意整理が出来ない場合の債務整理手続には何がある?

任意整理が出来ないということが確定した場合,それでも生活が苦しいからどうにかしたいということは十分に考えられます。

そういった場合には,他の債務整理手続を行うしかありません。

支払不能の場合→自己破産手続

任意整理が不可能な場合,個人再生等を行っても無駄であるという可能性はおおいにあり得ます。
ですから,今後苦しい生活を継続するくらいなら,自己破産手続をされた方がメリットがあるという場合もあります。

元金カットすれば支払える場合→個人再生手続

元金をカットすればなんとか支払えるという場合には,個人再生を行うというのもひとつの手段ではあります。
しかし,金額にもよりますが,あまりメリットがない場合も存在します。

信用情報機関のいわゆる「ブラックリスト」に載るのは自己破産も個人再生も10年間で同じ。
自己破産は職業制限が付いてしまうため該当する職種の人は自己破産のデメリットが大きくなりますが,そうでなければ大きな差はありません。
ですから,任意整理が難しいような場合には,自己破産を優先的に考えた方が良いかもしれません。

他の手続に途中から移行すると,事務所費用はどうなるの?

任意整理の和解成立前には,事務所に積立金として一定の金額を支払っていくことになります。
これは任意整理を行った際にきちんと毎月支払いを継続することが出来るかをテストする意味合いもあるもので,ここで貯めた金額から事務所費用や貸金業者への返済に充てることになります。
しかし,和解成立前の積み立ての段階で任意整理をしても返済は不可能と判断された場合には,自己破産や個人再生などの別の債務整理へと移行することになります。

その場合,途中まで積み立てた金額があるならば,そこに差額分を追加することで自己破産や個人再生の手続へと移行させてくれる場合がほとんどです。
ただし,別途改めて支払わなければならなくなる事務所もあるため,きちんと事前に調べることが必要でしょう。

おわりに

最初にも述べましたが,任意整理が出来ないケースはあまりないと言えます。
それでも,貸金業者の協力によって成り立つのが任意整理である以上,断られる可能性は常に視野に入れた方がいいでしょう。

一番良いのは,返済が難しくなるかもと思った段階で早々に専門家に相談してしまうことです。
早めの相談,早めの対策。
それが安定した返済への近道でしょう。