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最近話題の「家族信託」とはどんなもの?

「信託」とは?

今回は家族信託について説明しようと思いますが、その前にそもそも「信託」とは何なのでしょうか?

信託の定義

「信託」とは、イギリスで生まれたものです。
受託者が一定の目的に従い、財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為(信託行為)をすべきものとすることをいいます(信託法2条1項)
委託者が自らの財産を信頼出来る人(受託者)に信託し、受託者は信託された財産を管理、運用し、そこから生まれた利益を受け取ります。
その利益は、信託受益権によって、委託者が指定した人(受益者)に渡す、というのが簡単な流れです。

※上記の図は一般社団法人信託協会HP「信託の基本」の図1引用https://www.shintaku-kyokai.or.jp/trust/base/となるため、上記を参考に別途作成いただけますと幸いです。

信託の対象となる財産は?

信託の対象となる「財産」には、金銭的価値に見積もり得るものすべてが含まれることになります。
では、信託の対象となる財産に含まれるのは次のうちどれしょうか?

1) 金銭、不動産、有価証券特許権等の知的財産
2) 委託者の生命、身体、名誉等の人格権
3) 債務

この中では「財産」となるのは1のみ、2と3は「財産」とはみなされません。
ただし、債務に関しては条件によっては信託することが可能です。
というのも、委託者と受託者の合意に基づいて、かつ、債権者の同意を得て、委託者の債務を受託者が信託財産として引き受けることが出来るからです。
このため、実質的には「積極財産(プラスの財産)」と「消極財産(マイナスの財産)」を合わせて信託することも可能になるのです。

信託の方法は?

信託には3つの方法が認められています。

1)信託契約を締結する方法(信託法3条1号)
2)信託遺言をする方法(信託法3条2号)
3)自己信託証書等を作成する方法(信託法3条3号)

1)信託契約を締結する方法

最も典型的な信託の方法がこれです。信託契約は、当事者(委託者・受託者)の合意のみで成立し、効力が生ずる諾成契約です。
信託契約において、その信託行為に停止条件または始期が付されているときは、当該停止条件の成就または当該始期の到来によって効力が生じます(信託法4条4項)
ちなみに、実務上契約書は「私署証書」で作成するのでしょうか? それとも「公正証書」で作成するのでしょうか?
これは、「公正証書」として作ることになります。金融機関の場合は公正証書で作成することを要求しており、私署証書で作成すると実務上不利益が出ることがあります。よって、公正証書としての作成が基本となります。

2)信託遺言をする方法

遺言者は、遺言によって受託者を指定して、1)受託者に対して遺言者の財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をすること、及び2)受託者は一定の目的に従い(専らその物の利益を図る目的を除く)財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきことを指定する方法です。
遺言により受託者が指定されているときには、受託者は委託者の相続人、受益者、信託管理人等に引き受けの確答を要します(信託法5条2項、3項)
なお、指定された受託者が引き受けの回答をしないとき、遺言に受託者の指定がないときには、裁判所は利害関係人の申立てになり、受託者を専任します。

注意

信託銀行の商品である「遺言信託」とは違うので注意が必要です!
遺言信託というのは、身分上の行為であり、遺言の作成から執行までをトータルサポートするというものです。

3)自己信託証書等を作成する方法

これはいわゆる「自己信託」と呼ばれるものです。
これは旧信託法では認められていませんでしたが、平成18年の改正により認められるようになりました。
これは一体どのようなものなのでしょうか? 具体例を元に解説します。
例えば非上場の株式会社Zを経営するオーナー社長Aがいるとします。社長はこの会社の取締役である息子Bに、ゆくゆくは継がせたいと考えています。しかし、今はまだBの経営判断には不安な面があります。また、株価は低い状態です。そこで、Bが立派な社長になるまで、あるいはAが死亡又は成年後見等が開始するまでは、Aが会社の議決権を行使し続けたいと考えています。
このような場合に「自己信託」を行うことで希望を実現することが出来ます。
この場合、社長Aが委託者と受託者を兼ね、息子Bが受益者となるという構造になります。この際、信託財産は自社株ということになります。
自己信託については法的注意点があります。
自己信託では、設定当初は自分(委託者)が受益者まで兼ねる場合もあります。委託者、受託者、受益者が全て自分になっているという状態です。
このような状態であっても、受益者が後で決まれば問題はありません。
しかし、半永久的にこの状態が続くというのでは、信託をした意味がありません。
そこで、受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続した場合、信託は終了することになっています(信託法163条2号)

家族信託とは?

「家族信託」とは、委託者=受託者=受益者=家族というような場合をイメージして下さい。
スタート時には委託者=受益者・受託者の事例が多くなっています。
家族・親族に管理を託すので、高額な報酬は発生しません。
よって、一部の資産階級のための制度ではなく、誰でも気軽に利用出来るという利点があります。
家族信託は、不動産やお金等の資産を、目的を決めて(認知症対策・老後の生活資金・介護費など)自分の信頼する家族にその資産を託し、その管理や処分を代わりに行ってもらうという仕組みです。
これを行うことによって、特に認知症になってしまった場合に生じる様々な不利益を回避することが出来るなど、様々なメリットがあります。

※上記の図は一般社団法人家族信託普及協会HP家族信託のイメージと機能http://kazokushintaku.org/whats/を引用していますので、こちらを参考に別途作成お願いします。

家族信託のメリットは何?

後見制度のデメリットを回避出来る?

成年後見制度(法定後見・任意後見)は負担と制約が多くあります。
たとえば、毎年家庭裁判所(後見監督人が選任されている場合は後見監督人)への報告義務の負担があります。
また、後見監督人が選任された場合は、後見監督人の報酬の負担が月額1~2万円程度発生します。
それから、成年後見人制度を利用すると「本人にとってメリットがある」という場合にしか資産を動かせなくなるため、資産の積極的活用や生前贈与、相続税対策が出来ないというデメリットも存在しています。
こういったデメリットが、家族信託をあらかじめ締結しておくことによって本人の判断応力が喪失した後も、積極的な資産運用や組み替え(不動産の売却・買換・借入によるアパート建設、遊休不動産の開発、老朽化した賃貸物件の建て替え等)も、受託者たる家族の責任と判断で可能となります。

後継ぎ遺贈が可能になる?

通常の遺言では、二次相続以降の資産承継先の指定が出来ません。
二次相続というのは、子の次の世代のこと。
つまり、あくまでも資産を継がせることが出来るのは子の世代までということになります。
しかし、家族信託を行うことにより、二次相続以降の資産承継者を指定することが可能になります。つまり、遺言の代用に加え受遺者の財産管理が実現出来るということなのです。

共有不動産の問題を解決出来る?

法定相続人が全員でひとつの不動産を共有してしまった場合、何かのきっかけで争いが起きれば「争続」となってしまうことがあります。
共有不動産は、共有者全員が同意しなければ処分することが出来ません。
たとえば今は単独で所有していたとしても、将来的に兄弟が不動産を共同相続してしまえば結局同様の問題が生じる可能性があります。
そこで、家族信託により不動産の共有を回避し、一番よいタイミングで不動産の処分や有効活用を図ることが出来ます。
信託財産になっている場合には相続財産からは外れることとなり、受託者の好きに活用することが出来ます。
不要な争いを避けるために家族信託を利用するということも有効な手段となるのです。

家族信託の法的整理

遺言代用信託

遺言代用の信託は、典型的には高齢者が委託者となり、信託銀行等に財産を信託して、委託者の生存中は自らを受益者とし、委託者が死亡した場合には委託者の妻を受益者として、信託財産から給付を受ける権利を取得するという信託が考えられます。
この信託を設定することにより、自らの死亡後における財産の分配を行うことが可能となり、生前に自らの死亡後の財産承継を図る民法上の「死因贈与」(生前は自分のため、死後は妻のために財産を使うということ)と類似する機能を持たせることが出来る。
旧信託法においては、このような遺言代用の信託に関する特例は存在しませんでしたが、信託行為にその内容を定めて遺言代用の信託として利用することは可能で、実務においても設定事例は少なからず存在していました。
こういったことから、潜在的なニーズは多いと考えられます。

後継ぎ遺贈型の受益者連続信託

たとえば、委託者が当初は自らを受益者とし、委託者が死亡後は委託者の妻を受益者とし、その妻の死亡後は委託者の長男を受益者とし……など、委託者の死亡後においても、受益者が連続する信託のことを言います。
信託法の母国である英米においては、一般的に利用されている制度です。

後継ぎ遺贈型の受益者連続信託のポイント

通説では、民法上跡継ぎ遺贈は無効となっております。
旧信託法においても、この規定はありませんでした。
後継ぎ遺贈型受益者連続も、民法上の後継ぎ遺贈と同様の効果を持っています。
そのため、この効力を否定されるおそれがあります。
その理由は2つあります。

1つは、相続法上の秩序を乱すおそれがあるというもので、遺留分制度の潜脱といいます。遺留分とは、残された遺族の拠り所となるものです。たとえば、親族などの相続人がいる人が愛人や福祉団体などに遺贈すると遺言を残しているなどのケースが考えられます。
これでは親族は遺産を受け取ることが出来なくなることも考えられます。
そこで、これを防ぐために存在しているのが「遺留分」なのです。たとえ遺言で遺贈すると残されていたとしても、ある一定の割合は遺族へ相続されるというものです。これが制定されていることにより、遺留分権利者(配偶者、子等)は必ず一定割合を相続出来ることになります。

2つ目の理由は、物権法上の秩序を乱す期限付き所有権の創設の可能性です。
この2つの理由から、これまでは後継ぎ遺贈型受益者連続信託の規定がなかったのです。

しかし、これには問題点がありました。
生存配偶者の生活の確保、個人企業経営、農業経営における後継者の確保等、実務上のニーズに応えられないというものです。
そこで、新信託法(91条)において、当該受益者連続信託設定の時から30年を経過した時以後に受益者が受益権を取得し、当該受益者が死亡するか、当該受益権が消滅するまでの間その効力を認める、と定められました。
これにより、後継ぎ遺贈型受益者連続信託が認められることとなったのです。
ただし、この場合も遺留分制度の潜脱は認められないこととなっています。

豆知識

立法過程上、要綱上の「30年を経過した【時に】」という文言が、「30年を経過した【時以後に】」に変更されました。これは、「ある時点までに出生していたか否かで権利の帰属が決まるという立法は法制上望ましくないという判断」によると考えられ、30年経過した前に出生しているか経過した後に出生しているかが争点となったものです。
では、後継ぎ遺贈信託で、この信託を設定してから30年目に受益者となるべき子どもが誕生した場合(受益権を取得する者はその子以外いないものとする。)、その子が80年間生存したとすると、最長で、何年間その信託は効力があり存続することになるものと考えられるでしょうか?
30年目なのでこの信託は有効となり、30年+80年=110年、この信託の効力が続くということになります。

家族信託の活用事例

では、具体的に家族信託はどのように活用することが出来るのでしょうか?
いくつか具体例を挙げてみます。

株式信託による事業継承

例)オーナー社長Aは、体調を崩しており、後継者である娘Bに早期に株式を譲渡したいと考えている。しかし、贈与税等の負担を考えると、すぐにBに全株式を譲ることはできない。

家族信託による解決

➡自益権=A,共益権=B

【注意点】

1)Aが死亡したときは、信託が終了し、株式は全てBに移転するように定め
ておく(遺言の代用)

2)Aの一方的意思表示で信託契約の解除ができるようにしておく。
(後継者としてふさわしくない場合にはいつでも株式を取り戻せる)
cf.受託者を変更すれば別人を株主にすることも可
(親族外の第三者に一時的に株式を信託することも可能)

認知症になる前の対策

父親名義の自宅
土地評価額 2,000万円、建物評価額300万円

1)両親が住んでいる実家は、数年後に売却予定。売却代金は息子が贈与を受け、相
続時精算課税制度を利用したい。

2)贈与を受けた売却代金をもって、息子が高齢者向けの介護付きマンションを購入
し、父と母に住んでもらいたい。

3)今後数年間の間に父が認知症になると売却不可

この条件でどの方法が最も低コストで済むかということを考えてみます。

【解決案1 息子に直ちに不動産贈与】

自宅土地建物を息子に贈与した場合の税金シミュレーション
登録免許税 約46万円(贈与時)
不動産取得税 約39万円(贈与時)
譲渡所得税 約531万円(売却時)
(取得費不明で2,800万円程度で売れた場合)
➡合計で620万円弱のコスト

【解決案2 成年後見制度利用】

現時点では対策をせず、将来父が認知症になったら成年後見制度を利用
➡認知症にならなかったらコストが安いが

1)専門職後見人がついた場合の報酬コストが発生する
2)裁判所の判断によって、売却が不可能な可能性もある
3)売却代金を息子に贈与する点に関し、家庭裁判所を説得することは困難

【解決案3 家族信託の活用】

息子を受託者として土地建物を信託
登録免許税 約9万2,000円(信託時)
不動産取得税 0円(信託時)
譲渡所得税  0円(売却時)
譲渡所得税については、マイホーム売却に関する3,000万円控除を利用。
(受益者である父親に関し、適用を判断)

この3つの解決案を見て見ると、家族信託を利用することが最も低コストで済むと考えられます。

おわりに

家族信託は比較的新しいものではありますが、うまく活用すると非常に便利に、なおかつ争いも少なく資産を活用することに繋がります。
もちろんケースバイケースで不利になることもありますが、その点も考慮した上で検討してみるのもいいかもしれません。

どれくらい戻ってくるのか?