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自己破産で慰謝料は免責される?

自己破産とは、自分の収入や財産で債務を支払うことが出来なくなった場合に、自分の持っている全財産をお金に換えて各債権者に分配、清算して生活を立て直すという方法です。
これにより、ブラックリストに載ってしまったり一時的な職業制限があったりと短期的、長期的ともにデメリットはあるものの、債務に追われることがなくなり落ち着いて生活を建て直すチャンスを得ることが出来ます。
一度借金をチャラにして、苦しいばかりの生活をなんとか上向かせていく。
それもまた、ひとつの選択肢であると言えます。

ところが、自己破産をしても一部の債務に関しては免責されることがなく、支払いの義務が残ることになります。
これらの額によっては、自己破産をしたとしても生活が上向く可能性がないということになってしまいます。
では、その債務には一体どんなものがあるのでしょうか。


司法書士法人相澤法務事務所は2009年東京都板橋区にて開業2019年で10周年を迎える。
開業当初から「依頼者ファースト」を軸に少数精鋭スタッフにより事務所を運営。
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司法書士法人相澤法務事務所

司法書士法人相澤法務事務所
代表司法書士 相澤 剛

非免責債権とは

自己破産が認められると、ほとんどの債権に関しては免責されて支払いの義務から解放されることになります。
しかし、下記の債権は「非免責債権」といい、自己破産があったとしても支払い義務を免れることは出来ません。
簡単に分けると「税金や公共料金の一部」「損害賠償(慰謝料)」「家族間で発生する費用」「その他」という形になります。

税金や公共料金

1)税金や公共料金の一部

ここには年金や国民保険なども含みます。
国民の義務として行政に支払うべき債権に関しては免責されず、支払う必要があります。
また、類似の債権には水道代もあります。
水道代はやや複雑で、上水道は大部分が免責されて一部非免責、下水道は全てが非免責となっています。
電気代やガス代については免責されることになっています。
これらの支払い義務を免れることが出来るのは、時効か相続放棄くらいしかありません。

損害賠償(慰謝料)

2)悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償権

積極的な加害の意志により発生した損害賠償がこれに該当し、詐欺、医療事故、窃盗、横領等などが具体例としてあげられます。
過失の場合にはこれに該当しません。

また、自己破産前に、嘘の申告を行って借入を行った場合もこれに該当することがありますが、そもそもこの場合は虚偽申告として自己破産の免責不許可事由にあたるため、根本的に免責されることがありません。

3)破産者が故意または重過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく

損害賠償請求権
これに該当するのは、殺人、障害、酒気帯び運転、煽り運転、危険運転等です。
軽度の過失に関しては免責されることがほとんどとなります。

家族間で発生する費用

4)夫婦間で発生した扶助料

5)離婚後の子の監護に要した費用

6)直系血族、兄弟姉妹、三親等内の親族間で発生した扶養料

上記の3つに関してはほぼ同じ内容となりますが、生活費や医療費、養育費など家族の扶養に関わる費用に関しては支払いの義務が残ります。
特に夫婦間の場合は「結婚している間は助け合うこと」という法律もあるため、収入に応じて分担する義務があり、それを逃れることは出来ません。

その他

7)雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権

個人事業主に雇われている家内労働者への支払いがこれに該当します。
従業員への未払い給与がある場合には、これも支払う義務から逃れることは出来ません。

8)罰金

各種罰金についても、免責されることはないため支払い義務を免れることは出来ません。

慰謝料は免責されるのか?

慰謝料には、不倫や婚約破棄、セクハラ、傷害などさまざまな種類がありますが、この中には免責されるものとされないものとが含まれています。

では、どのような慰謝料が非免責にあたるのでしょうか?
簡単に言うと「直接的に相手に害を与える行為があったかどうか」で判断されることになります。
この際、「故意」で「悪意がある」と認定されない場合には非免責とはならない可能性が高いということもポイントです。

破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求

非免責債権の中でもとりあげたこの慰謝料に関しては非免責となります。
積極的かつ直接的な加害によるものがここに含まれるため、詐欺や横領等によるものがこれにあたります。

浮気や不倫による慰謝料は非免責債権に該当するのか?

不貞を受けた側は「精神的苦痛を受けた」として慰謝料の請求を行います。

このとき、浮気等が「積極的な加害の意志」にあたると判断されれば非免責となります。
しかし、浮気や不倫の慰謝料の場合は相手の行動が直接被害を与えるのではなく、相手の行動によって間接的に精神的苦痛を受けた結果ということになるため、非免責債権の条件となる「悪意で加えた不法行為=直接的に行った行為」とは認められない可能性の方が高くあります。
よって浮気や不倫による慰謝料は、自己破産を行った場合は免責されてしまい払われないケースの方が多いと考えられます。

故意又は重過失によって人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求

これも先ほどの非免責債権の項の中で上げたとおり、非免責債権となります。
殺人や傷害、酒気帯び運転や危険運転等がこれらに該当しますが、DVによる慰謝料は故意により人の生理的機能を侵害する行為「傷害」にあたるため、非免責債権となります。
たとえ自己破産をしたとしても、配偶者にDV行為を行って慰謝料を支払うことになっていたとしたら、破産後も支払いの義務が残ります。

離婚による慰謝料はどのように考えられるのか?

離婚後、慰謝料等の支払いを残したまま自己破産をしてしまうというケースも考えられます。
このときの慰謝料やその他の支払いに関しては、どのように考えることが出来るのでしょうか。

離婚により発生する支払いには、細かく見ると様々なものがあり、大きく分けると「慰謝料」「養育費」「婚姻費用」となります。
この中で原因によって判断がわかれやすいのが慰謝料です。

離婚の慰謝料

まずは、離婚の原因となった側が相手に精神的苦痛を与えたとして支払うことになる慰謝料。
これは先ほどの項でも取り上げましたが、免責されて支払い義務がなくなるケースの方が多いと考えられます。

慰謝料が発生するような離婚には、大きく分類すれば不倫された場合と暴力行為を受けた場合とがあるでしょう。

不倫に関しては「積極的な加害の意志」にあたると判断される可能性は低く、ほとんどの場合は免責され支払い義務は免除されると予想されます。

しかしDVなどの暴力行為を受けた結果の離婚の場合には「故意または重過失によって人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償」と判断されるため、非免責債権となり自己破産をしても支払い義務は残ります。

養育費

離婚をした際に子どもがいる場合には、子どもの養育費の支払い義務が発生します。
この養育費は非免責債権の一部のため、自己破産をしたとしても支払う義務が残ります。

婚姻費用

居住費や生活費、学費等がこれらにあたります。
この費用に関しては、収入の割合によって分担することが定められています。
たとえ別居していたとしても、離婚が成立するまでは諸々の費用の支払い義務が定められています。

ただし、不貞を行った側が請求する場合は例外になることもあります。
いわゆる「性格の不一致」による離婚の場合は淡々と分けるのみとなりますが、不倫等の事情がある場合にはその限りではないため、請求したいと考える場合は専門家に相談するようにしましょう。

非免責債権の回収方法

自己破産の流れとは?

ここで、まずは自己破産の手続について簡単に説明します。

自己破産を決めた場合、まずは弁護士や司法書士などの専門家に依頼することになります。
弁護士に依頼するか司法書士に依頼するかで細かな違いはありますが、基本的な流れはいずれも同じです。

依頼を受けてもらうと、まずは必要書類を集め、精査し、自己破産手続のための書類を作成することになります。
また、自己破産をするために必要となる費用の積立を行い、申請当日に備えることになります。

必要書類を揃え、破産・免責申立書の作成も出来たら裁判所への申請を行います。
ここで裁判所に受付受理された段階で、自己破産に向けた手続が開始されます。
資格制限などもこの時点から開始です。

本人申立の場合には申立日からおよそ1ヶ月で債務者審問が行われ、自己破産について理解しているかの確認をとられた後、破産手続開始決定が行われて破産者名簿に登録されます。

この際、免責不許可事由にあたるものがあるかないかも審査されます。
免責不許可事由がなく、処分出来る財産もないと判断された場合には同時廃止となります。

免責不許可事由があったり、処分出来る財産があると判断されたりした場合には管財事件となり破産管財人のもと、財産の処分や債権者集会などが行われ、その後で破産手続廃止決定や破産手続終結決定が出されて免責手続への移行となります。

免責手続には免責審尋が行われ、氏名、住所の確認や、破産債権者からの連絡の有無、また、反省の弁などを訊ねられます。
多くの場合はそれほど長時間に及ぶことはなく、特別な事由がなければ免責審尋は滞りなく完了し、免責許可決定が行われることになります。

免責許可決定が行われた後、官報公告が掲載され2週間が経過すると免責許可決定となり、全ての手続が終了するという流れです。

どの段階で非免責債権を回収出来る?

さて、上記の流れの中で、非免責債権にあたる債権はどのタイミングで回収出来るのでしょうか?
実は、自己破産の手続の流れにおいて、非免責債権を回収するタイミングというのはありません。
破産手続においては「免責するかしないか」だけの判断となり、債務の一覧の中のどれが免責でどれが非免責かという判断をすることはないのです。

つまり、非免責債権がある場合には、債権者側が自ら申立を行わない限り回収出来るタイミングが巡ってこないのです。

たとえば税金や水道代のようなものは、支払い通知が届くため支払いの義務があることを通知出来ます。

しかし、生活費や養育費、医療費などについては、きちんと取り立てを行わなければ支払われずに流れてしまう恐れもあります。

個人間で発生する非免責債権については、債権者側がきちんと知識を持って把握しておかなければならないということが重要なポイントです。

どうやって回収すればいい?

では、これらの債権はどのように回収すればよいのでしょうか?
破産手続が終了した後に請求するというのが基本的な方法となります。

最も簡単な方法は個人間での話し合いですが、これは効果が得られないという可能性も十分にあり得ます。

様々な手を尽くしてもやはり払って貰えず、どうしても回収したいという場合には裁判で決着を付けることとなります。

また、債権者側は「非免責債権だから払ってくれ」と主張しても、債務者側が「いや、これは免責債権だ」と主張して争いになる場合もあります。
この場合も、決着を付ける場は法廷になります。

これまでの数々の判例に照らし合わせて裁判所で判決が出され、非免責債権だと認定されれば支払い義務が生じ、認定されなければ免責となります。

いずれにしても、まず必要となるのは非免責債権についての知識であるということは覚えておきましょう。

おわりに

慰謝料を抱えたまま自己破産することになってしまうという場合や、慰謝料の支払いが原因となって自己破産に追い込まれるという場合など、様々なケースが考えられると思います。

自己破産の直接の原因が慰謝料ではない場合にはさほど大きな問題にはならず、非免責債権と判断されたら苦しいながらも少しずつ返済するという形で生活を送ることは出来るかもしれません。

しかし、莫大な慰謝料を支払わなければならなくなり、それが原因となって自己破産を考える場合には注意が必要です。

過失であれば免責されることもありますが、故意であったり悪意があったりする場合には非免責債権となり支払い義務を免れることは出来ません。
そのため、たとえ自己破産をしたとしても支払い義務は延々と続き、生活が安定する可能性がほとんどないかもしれないのです。

そもそも悪意を持って害をなすこと自体が問題外ではありますが、自己破産でも生活の再建を行うことが出来ない場合もあるということは頭の片隅においておく方がよいでしょう。

どれくらい戻ってくるのか?