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自己破産すると会社にバレる?そして会社の破産とは…?

自己破産と会社の関わりは、大きくふたつのパターンがあります。
まずひとつ目は、個人が自己破産した場合に会社に通知が行くのかどうか。
そしてもうひとつは、会社そのものが破産するとどうなるか、ということです。
性質の大きく異なるふたつのケースですが、今回は「自己破産」と「会社」の関わりということで、それぞれ解説していきます。


自己破産したことは会社にバレてしまうの?

まず前提として、自己破産をしたという事実は何かに明記されるということはほぼありません。
例外として官報には記載されるため、これを常に確認している場合は自己破産の事実を知られることもあるかもしれませんが、まれなケースと言っていいでしょう。
また、信用情報機関には自己破産をしたことが記載されますが、これも一般に公開されている情報ではなく、信用情報機関の会員となっている企業が参照するものです。
そのため、一般の人に自己破産をしたということが知られることはあまりないと言えるでしょう。

しかし、会社となると、知られてしまう可能性がやや上がります。
それは一体どんなケースなのでしょうか?

会社から借りている場合

会社が債権者となっていた場合、自己破産の開始決定通知が債権者に送られることになるため、必然的に自己破産の事実がバレてしまいます。
もっとも、自己破産に至る前の段階で借金の返済が滞っていることに気づかれる可能性が高いため、雲行きが怪しくなった時点で感づかれているかもしれません。
いずれにしても、会社から借金をしていた場合には例外なく自己破産の事実が伝わるということは間違いありません。

退職金証明書の請求を行った場合

自己破産を行った場合、一部を除いて財産は基本的に回収され、全ての債権者に平等に分配されることとなります。
その財産の中には「将来受け取ることが出来る退職金」も含まれます。
この退職金とは、自己都合退職を行った場合にだいたいいくらになる見込みがあるか、というものを計算で割り出したものです。
就業規則の退職金規定等で退職金の計算方法が書いてあり、申立人が自ら計算することが出来る場合には、その就業規則と一緒に計算した金額を提出すれば問題ありません。
しかし、就業規則に詳細な計算式が載っていない場合や、自分では計算が出来ないという場合には、勤務先に退職金証明書の請求を行わなければならなくなります。
退職金証明書は、通常使用するものではありません。
ですので、なぜ必要なのかという取得の理由を説明することが難しく、自己破産をするためと告げなければならない可能性があります。
また、理由を説明する必要がなかったとしても、退職金証明書を使用する場面がまれなため、感づかれてしまうということも考えられます。
自己破産以外の理由で退職金証明書を使用するケースといえば、住宅ローンや借り換えの審査、将来設計のため、などがあるためこれらを理由として挙げることは出来ます。
しかし、その場合は嘘の理由を告げることになってしまうということは意識しておいた方がよいでしょう。
ただし、裁判所によっては提出しなくてもよい場合もありますので、そのときは会社に伝わる可能性は低いと考えられます。とはいえ、ほとんどの裁判所では提出を求められるため、これはあまり期待出来ません。
また、退職金自体がない会社の場合は「退職金がない」ということを証明するために就業規則等を提出する必要があります。
この場合は退職金証明書の提出は当然ながら行わないため、会社には感づかれないかもしれません。

会社の関係者が保証人になっている場合

融資を受ける際には、保証人が必要となるケースがほとんどです。
自己破産をすれば申立人は免責となり、借金を返済する必要がなくなります。
ところが、保証人は免責とはならないため、債権者が保証人に通常通りの請求を行う権利を得ることになります。
この場合、保証人は申立人が自己破産したことを知る事になりますが、その保証人が会社の関係者であった場合には、その人から会社へと自己破産の事実が伝わる可能性があります。

会社で官報を確認している場合

そもそも官報を購読しているという会社が少ないため、知られるパターンとしてはこれは本当にまれだと言えます。
しかし、役所や金融系、不動産系の企業、会社や組織の解散・合併の情報を確認するような会社の場合には官報を購読し、中身もチェックしているということがあります。
そういった場合には官報に掲載された自己破産者の情報から気づかれてしまうということもあり得ます。
もっとも、官報自体がなかなか一般の人の目に触れるものではないため、官報が原因で知られるということはないでしょう。

自己破産すると会社をやめなければいけないの?

よくある誤解で「自己破産したら絶対に会社を辞めなければならない」というものがあります。
しかし、基本的にはこれはありません。むしろ、破産したことを理由に解雇された場合は不当解雇にあたるため、解雇無効による地位保全及び賃金仮払仮処分申立(労働保全処分)、地位確認等請求(労働民事訴訟)、労働審判等で争うことができます。
同様に、破産したからという理由で減給するということも出来ません。
一般的には、自己破産と退職との関連性はないと考えて構いません。

ところが、いくつかのパターンでは自己破産後に解雇されることがあります。

お金を扱う職業の場合

お金を扱う職業に就いている場合、計画的な返済が出来ない人間には金銭を任せられないという理由で解雇されてしまったというケースはありました。
これに関しては、実際に解雇が認められた判例もあるため、注意が必要です。
また、お金を扱う職業の場合で、就業規則に自己破産をした場合の解雇について規定があるケースがあります。
「社員の破産が会社の運用を妨げる」ということが明らかであり、合理的な理由があると判断される場合はこの就業規則は有効となり、解雇されることも考えられます。
もっとも、たとえ就業規則に「自己破産したら解雇する」旨の記載があったとしても、それが会社の運営になんら不利益をもたらさないと判断される場合には、解雇は不当と扱われます。
ですので、これもケースバイケースと言えるでしょう。

会社に借金がある場合

会社から借金をしているという場合、自己破産によって借金が免責となると、貸していた金額が全額は取り戻せないことになってしまいます。
その場合、会社は免責された分損害を与えられたと訴え、申立人を解雇することもあり得ます。
この場合は自己破産そのものが解雇の原因ではなく「会社に損害を与えた」ということが解雇の原因となるため、不当解雇に当たらないことが考えられます。

自己破産による資格制限のある職業の場合

自己破産による資格制限のない職業に従事している場合、自己破産したからといって解雇されることもありませんし、就職にも不利益を得ることはありません。
ただし、法律で定められた特定の職業については資格制限がかかり、一定期間その職業に就くことが出来なくなります。
制限のかかる資格は、下記の通りです。
弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、後見人、保険外交員、警備員、宅地建物取引士等
なお、免責許可決定が確定すると、これらの資格制限は消滅します。また、免責が許可されなかったとしても、破産手続の開始から10年が経過すると資格制限は消滅します(これを「復権」といいます。)。
資格制限が消滅した後は、自己破産前と同様に全ての職に就くことが可能です。

取締役になっている場合

取締役も、破産開始決定によって委任契約が終了してしまいます。しかし、免責の確定を待たずにすぐに再任することは可能です。
というのも、自己破産したということは、取締役の欠格事由にはならないからです。
自己破産した人が代表取締役になるということも、特に問題はありません。

会社にバレたら困るから自己破産出来ない場合には?

先ほども説明した通り、自己破産すると会社に知られてしまう可能性があります。
とはいえ、基本的には知られても、自己破産したことを直接の理由として解雇や減給をすることは法律上認められていないため、大きな問題はありません。
ところが、会社から借金をしていたり、資格制限にかかる職業であったりでどうしてもバレてしまうケースというのは存在します。
そうなっては困るので自己破産出来ない、しかしこれ以上は支払いも出来ない、どうしたら……と悩む人も中にはいるかもしれません。
そういった場合には、下記のような方法が考えられます。

会社から借金をしている場合

会社から借金をしていると、自己破産をすれば100%会社に知られてしまいます。
そしてその場合、会社に不利益をもたらしたという理由で解雇されてしまうということも考えられます。
それを避けながら、借金を減額する方法はないのでしょうか?
ひとつ手段があるとすれば、それは「任意整理」を行うことです。
任意整理は債権者を選択して生活の立て直しを図ることが出来るため、会社だけを省いてそれ以外の借金について手続を行うことが可能です。
自己破産以外の債務整理の方法としては個人再生もありますが、個人再生の場合には全ての借金が対象となり、除外する債権者を選択することは出来ないため、この場合には利用出来ません。

資格制限に該当する職種の場合

弁護士や公認会計士等、いくつかの職種に関しては自己破産すると資格制限に該当し、必然的に職を失うということがあり得ます。
これは自己破産をした場合には避けて通ることが出来ません。
しかし、資格制限に該当するのは「自己破産をした場合」のみです。
借金を帳消しにすることは出来ませんが、任意整理か個人再生を利用して再生計画を立てれば、現状よりも生活を立て直しやすく出来るかもしれません。

取締役である場合

取締役も、自己破産の開始決定がなされると一旦職を辞さなければなりません。
しかし、資格制限のある職種と同様、それは「自己破産をした場合」のみとなります。
そのため、任意整理か個人再生を利用すれば、職を辞する必要はなくなります。

もしも滞納したまま放置すると…

会社に知られたくないから自己破産は出来ない、だけど支払うことも出来ないからそのまま放置して滞納し続ける……
そんな方法を取って、いわば「逃げ」の態勢に入る人も中にはいるかもしれません。
しかし、滞納したまま放置してしまうと、会社にバレる可能性は格段に上がります。
というのも、借金の返済を滞納していると債権者に裁判を起こされ、その結果によっては給与を差し押さえられてしまう可能性があるからです。
融資を受ける際には職場を明記しているケースも多いため、裁判の結果が出てすぐに給与の差し押さえを行う金融機関も多くあります。そうなると、当然ですが会社にも知られることとなり、かえってややこしいことになってしまう可能性もあります。
どうしても支払いが出来ないという場合は、速やかに専門家に相談するようにしましょう。

会社の破産手続はどう進む?

ここからは、会社が破産する場合――いわゆる「倒産」についてのお話です。
法人の破産の場合には、金額が多額になるということに加え、内容も複雑になってしまうため原則として「管財事件」として扱われます。
個人の破産の場合には、財産の全てを売却するのではなく、ある条件をクリアしたものは自由財産として手元に残ることもあります。
しかし、法人の場合には全ての財産を処分し、債権者に分配することになります。
そのため「管財事件」となることが原則となるのです。
また、会社の破産の場合には自由財産はありません。
個人での破産の際には20万円以下の財産(東京地方裁判所の場合)は手元に残せることになっており、これを「自由財産」といいます。
しかし会社の場合にはそれが認められないため、全ての財産が換価されます。
この「予納金」とは、裁判所に納めるお金のことで、これが支払えない場合には破産手続を進めることは出来ません。その金額は数百万円に及ぶため、経営が傾いていると破産することも出来ないということになってしまいます。
そのため、危ないと思った段階で速やかに専門家への相談をする必要があります。

代表者が保証人になっている場合は?

中小企業では会社で融資を受ける際には多くの場合、代表者が保証人になっています。
そのため、会社が破産すると代表者に支払いの請求がくることがありますが、企業の負債となるととうてい支払うことが出来なくなってしまいます。
そのため、代表者も個人として自己破産が必要となってしまうでしょう。

おわりに

自己破産したからといって、基本的人権が失われるということはありません。
雇用に関しても、特定の職業以外では仕事を失うことはありません。
それでも色々な制限が出てしまうことは事実。どうしても自由が効かなくなってしまいます。
借金の返済に不安が出てきたら、できるだけ早い段階で専門家への相談を行い、適切な方法を考えることが必要なのかもしれません。

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