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やむを得ず自己破産。そのとき自動車はどうなる?

2019年11月20日 公開 更新

自己破産とは,自分の収入や財産で債務を支払うことが出来なくなった場合に,自分の持っている全財産をお金に換えて各債権者に分配,清算して生活を立て直すという方法です。
この場合の財産とは,不動産,現金,預貯金,将来受け取れる退職金等,現金化出来るあらゆるものをいい,もちろん自動車も財産として扱われます。
生活に必要な最低限の財産を除いては手元には残せないため,自動車やバイクなども原則的に処分されることとなってしまいます。


司法書士法人相澤法務事務所は2009年東京都板橋区にて開業2019年で10周年を迎える。
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司法書士法人相澤法務事務所

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代表司法書士 相澤 剛

自己破産すると自動車はどうなる?

先ほども説明した通り,自動車は財産として引き上げられてしまいます。
その自動車は原則的に処分され,現金化された後に債権者に分配されるというのが大まかな流れです。
しかし,その処分の方法にも実はいくつかのパターンがあります。
そのパターンとは,大きく分けると2つ。自己破産時にローンが残っているか,完済しているかです。
では,それぞれどのような違いがあるのでしょうか?

自己破産時,車のローンが残っていた場合には…

ローンを組んで自動車を買ったことがある人ならば知っているかもしれませんが,ローンを支払っている最中は,所有権はまだ車の持ち主にはないケースがあります。
「所有権の留保」といいますが,ローンを支払っている最中にはまだ本人名義になっていない場合があり,この場合には自動車はローン会社に引き上げられてしまいます。
ローン会社に引き上げられると,車は売却され,優先してローンの返済に充てられることになります。
「所有権の留保」がない場合もあります。
そういった場合には,基本的に財産と捉えられるため財産として引き上げられてしまいますが,車の査定額が20万円以下であれば手元に残すことが出来ます。
そのため,自らの所有権が留保されているかいないかという点を確認すれば,場合によっては車が手元に残るというケースもあり得ます。
公共交通機関の発達している地域であれば,自動車の有無は関係がないかもしれません。
しかし,そうではない地域も多く存在しています。
そういった場合に所有権が留保されているかどうかを確認することで,車が手元に残る可能性もごくわずかではありますがあるでしょう。
ただし,所有権留保がない場合でも,注意が必要なこともあります。
元々所有権が留保されており,ローンの支払いが終わっているために事実上所有者が本人になっているはずなのに,契約書上は「所有権留保」となっている場合があります。
ローン会社との契約書においてそういった記載がされていることがあり,その場合は「所有権留保」として扱われてしまうことになります。
そのため,自己破産をするしないに関わらず,契約書をしっかりと確認しておく必要があります。

保証人がいる場合は…?

自己破産は保証人には関係がありません。
そのため,ローンの保証人がいる場合は保証人に請求されることとなります。
もしも車を売却し,その金額で借金を清算することが出来る場合は,保証人への請求はありません。
しかし,借金を清算しても差額が残ってしまう場合には残りが保証人に請求されることとなります。
ローンの保証人となっている場合,自己破産した人がローンを精算出来ているかどうか,確認する必要があるでしょう。

完済出来ていないが,どうしても車は残したい…

先ほども説明した通り,ローンの支払いが終わっていて所有権留保がない場合には,査定額によっては車が手元に残ることもあります。
しかし,完済出来ていない場合には車は原則として引き上げられてしまいます。
それでも手元に残したいという場合,「第三者弁済」という手段があります。
第三者弁済は,自分以外の誰かに借金を肩代わりしてもらうことをいいます。
有効であるかどうかは細かな条件があるため必ず利用出来るというわけではありませんが,自分に所有権がない場合にローンを完済して手元に残したい場合には,第三者弁済を利用するしかありません。
手元に残っているなけなしの財産でローンの返済だけを行おうということは「偏頗弁済」となってしまい,後々問題になります。
自己破産を検討される場合には,爾後,全ての債権者に対して平等に返済を行わなければならないため,特定の1社だけ返済するというようなことは出来ないのです。
自己破産申立直前であったとしても同様に偏頗弁済とされるためローンが残った状態で車の所有権を自分にというのは,なかなかハードルが高いことかもしれません。
また,第三者弁済が認められ,所有権が自分に帰属しても財産とみなされてしまえば引き上げられてしまうことになります。
そのため,どうしても車が必要な地域に住んでいる場合には一度車を手放した後,手元に残る財産で中古車を購入するという方法が現実的かもしれません。

自己破産時,ローンを完済している場合には…

自己破産をすると,所有している全ての財産を売却し,各債権者に分配,清算することになります。
車も財産として扱われるため,原則として車は破産管財人によって回収されてしまいます。
その後,査定が行われて売却され,債権者に分配されるという流れを辿ります。
しかし,その査定で20万円以下と判断されれば,処分されないで自分の手元に車を残すことが出来ます。
また,車やバイクには「法定耐用年数」が定められています。

一般用の自動車の場合…

小型車(総排気量が0.66リットル以下のもの)……4年

貨物自動車
ダンプ式のもの……4年
そのほかのもの……5年
報道通信用のもの……5年
そのほかのもの……6年
2輪・3輪車……3年
自転車……2年
リヤカー……4年
この耐用年数を過ぎている場合には「無価値」とみなされ,処分されずに手元に車を残すことが出来ます。

20万円以上の査定額で車を残したい場合は…

20万円以上の査定額となった場合,手元に車を残すことは原則として出来ません。
しかし,どうしてもやむを得ない事情があると判断されれば手元に車を残せる可能性もあります。
たとえば,通院しなければ命に関わる持病があり,そのために車がなければ難しい――などです。
もっとも,この「やむを得ない事情」はかなり厳しい判断をされるため,ほとんどの場合は認めてはもらえません。
ですから,こういった特例にはあまり期待が出来ないでしょう。
他の方法としては,自己破産をした場合にも若干ですが残る財産があります。
その財産を使って中古車を購入するか,破産者の親族等に破産管財人から車を買い取り,その後,その車を借りるという方法があります。
いずれにしても,一度手放した後で改めて入手するというのが,最も現実的な方法かもしれません。

車を残すために名義を変更したら…?

自分の手元に車を残したい。
しかし,自分の財産である場合は引き上げられてしまい,処分されてしまいます。
それを避けるために,自分以外の人間に名義変更をする! ということを考える人も中にはいるかもしれません。
しかしその場合は「財産隠し」と捉えられてしまい,免責が不許可となってしまいます。
免責不許可となってしまうと,自己破産することが出来なくなります。
借金を清算することも適わなくなり,破綻した生活を建て直す方法がなくなってしまいます。
また,市場価値以下の金額で先に売却し,手放してしまった場合も財産隠しとみなされます。
これらは,自己破産が決定した後はもちろん,自己破産の意思があるにも関わらず行った場合にも「財産隠し」として捉えられてしまいます。
自己破産のどれくらい前からという規定は定められていませんが,直近でこのような行為を行った場合は免責不許可となる可能性がありますので,注意が必要です。

それでもどうしても車は残したい…!

どうしても車を残したい場合には,「自己破産以外の手続きを行う」というのが根本的な解決方法になるでしょう。
自己破産以外の手続は以下のとおり,任意整理と個人再生があります。

任意整理を行う

任意整理とは,利息制限法に基づいて引直計算し、その金額に基づいて貸金業者と交渉し,利息や遅延損害金をカットしたり月々の返済額を減らしたりすることによって、総額や現在の毎月の支払額よりも減らす手続きのことをいいます。減額されるのは利息制限法によって定められた利率よりも高い利息の場合で,利息制限法よりも低い利率の場合には基本的に減額出来ません。
この場合,整理する業者を選択することが可能です。そのため,車のローンは整理の対象から外し,それ以外の債権を任意整理することで車を残すことが出来ます。
また,この場合はローンを完済していれば当然ながら債務ではないため,車は手元に残すことが可能です。
自己破産とは違い,自分所有の一定の財産を引き上げられてしまうということがないからです。

個人再生を行う

個人再生とは,債務の返済が出来なくなるなど,経済的に苦しい状況にある場合,将来の給与などの収入によって再生計画を立て,債権者の意見を聞いた上で裁判所が計画を認めた場合,債務を分割して3年(原則)で返済していく制度です。
この場合でも,ローン返済中であれば,自己破産の場合と同じく車は引き上げられてしまいます。
ローン完済後であれば車は引き上げられずに手元に残りますが「清算価値保証の原則」というものがあります。
清算価値保証の原則とは,再生計画によって減額された債務額と,手元にある財産とを比較した場合に,より高い方の金額を元に債権者に返済するというものです。
例えば,再生計画によって500万円だった借金を100万円に減額し,その金額を分割して返済するという約束をしたとします。
このとき,手元に車が残っていたとして,この車の市場価値が200万円だった場合,こちらの方が金額は高くなります。
基本的には,債権者に自己破産したときよりも多く返済出来るということが個人再生の原則となっています。
そのため,車を売却した場合に手に入る「200万」という金額が今後の返済額として採用されることとなり,その分返済はやや苦しくなることになります。

上記2つの方法のいずれを採用するとしても,今後の返済は続くことになります。
そのため,無駄に任意整理や個人再生を行ったとしても,やはり生活を立て直すことが出来ずに自己破産に至ってしまうということも考えられます。
これでは何の意味もありません。
車がなければ生活出来ない地域に住んでいたり,仕事の関係で必要になったりと,車が必要な事情は多々あると思います。
その場合は,例えばカーシェアを利用したり,タクシーを使ったりという方法もあります。
それも,カーシェアであれば展開していない地域があるし,タクシーは費用がかかりすぎるしなど,必ずしも受け入れられるものではないかもしれません。
そうは言っても,無理に抵抗して結果的に破綻してしまうのでは,元も子もありません。
最終的にはやはり車を諦め,別の方法を考えるよりほかないのかもしれません。
現時点の債務状況と将来的な生活の状況とを照らし合わせて,よりよい方法を模索していきましょう。

自己破産後,車は買える?

自己破産をした場合も,一定金額の現金は手元に残すことが出来ます。
生活再建のための資金ですが,これを元に現金一括であれば,特に条件はなく車を購入することが出来ます。
しかし,自己破産するといわゆる「ブラックリスト」に載ることになります。
信用情報機関に自己破産をした事実が掲載されることを「ブラックリストに載る」と言いますが,これは自己破産後,10年間続くことになります。
その期間は融資などを受けることが出来なくなり,その効力は当然自動車ローンにも及びます。
そのため,この期間中、ローンの審査に通るのは非常に難しいこととなります。
ローンを組まなければ車が買えないという場合には,自己破産後の一定期間内に再度車を手に入れることは難しいと言わざるを得ません。
なお,ブラックリストの期間はおおむね10年間ですが,信用情報機関によって掲載期間が異なるため,場合によっては5年間のケースもあります。

おわりに

車やバイクは,公共交通機関の発達していない地域であったり,車での運搬や移動が前提とする仕事をしていたりという場合には欠かせないものとなります。
しかし,自己破産という結論に至った場合,どうしてもそれを守りきることが出来ないこともあります。
それでも,絶対に手放さなければならないとは限りません。
方法は限定されてしまいますが,最後まで諦めずに行動すれば何か手段が見つかるかもしれません。